九州地方の実践

後藤清人さんの実践報告

福井県鯖江市の藤本肇さん、そしてこの後藤さんとも、北陸の湿田地帯、阿蘇山の山ろくのクロボク地帯と、条件は違いますが、ともに半不耕起の二回代かきでとろとろ層を作り出しています。目指すところが同じことを、興味深く思います。僕(世話人)自信の田んぼに応用がきくのではと、追っかけてみたいと思っています。
後藤さん、「あと3〜4歳若かったら、パソコンに挑戦するかもしれないけれど」と、おっしゃりそうな気がして、日韓自然農業交流協会にお願いして、その会報「プリ」から転載しました。

「無農薬で三十年、こんな稲作りなら楽」  後藤清人
      日韓自然農業交流協会 会誌「プリ」1998年12月号

 前号の作本弘美氏に引き続き、七月一日、熊本の轟学苑において開催された第十四回基本講習会中に実践事例報告として菊池市の後藤清人氏にお話いただいた内容を要約して紹介する。

農業が環境を破壊している

 まず自己紹介をします。菊池という温泉の近くで水田を一町七反やっております。年齢は七十二才です。自然農業を始めた時に、あまりにも草取りに苦労して、家内について行けないと言われ、ほとんど一人でやってます。
 始めた動機は昭和四十二年、厄払いの年に皆からお祝いを受け、第二の人生をどのように送ったらよいのかという思いから、まず身近な農業を考えてみたいと思いました。農薬の問題、化学肥料の問題はどうなっているかと思い、私が農業を始めてから累積計算をしましたら、一反当たりの量が七二〇キログラムでした。このまま行ったら、百年後は環境を破壊するのは農業だとの思いがして、明日から農薬、化学肥料は一切使わないと宣言したのです。それでずいぶん苦労した時代があるのですが。
 その頃、農機具会社に就職しておりましたが、給料は全部研究費にしました。何か一つでも掴めれば自然農業が見えてくるかな、という思いでした。今思えば、あの時一念発起してやってよかったと思います。

趙先生との出会い

 趙先生に出会えたのは九六年だったと思いますが、第二回の基本講習会で熊本の水上村でした。自然のありがたさ、農業といえども自然とうまく調整すれば自然農業はできるのではないかという思いで、一生懸命勉強させてもらいました。趙先生との出会いがあって、やった結果が見事に出るので、とても感謝しています。それが今から六年前に知ったわけですから、二四年間こんな良い方法がわからなかったのかと悔やまれてなりません。
 日本の生活の中で、米は原点です。主食ですよね。絶対米だけは守るのが、私達農家の仕事ではないかと思い、米には徹底的にこだわって来ました。お陰で三十年の歴史の中で、どんなところに行っても味だけは負けないと思うようになりました。ご飯を炊いてジャーに入れると、昨日のでも一昨日のでも心配いらない、ますますおいしくなる気がする、という事で喜ばれています。東京のお米屋さんが十六人集まって作っている協同組合のようなものがあるのですが、そこで「お宅のが日本一だ」と言われ、ぼちぼちあちこちから認められたかな、という思いで今、有機の世界にひたっております。遊んで喜ぶ「遊喜」農業をみんなに知ってもらえればいいなという思いで、今日は出てまいりました。
 今、世の中は環境という問題を抜きにしては回っていかない。戦後日本でふったと思われる農薬、化学肥料を計算すると(反当)五トンから一〇トンにもなる。特に園芸は。塩素系の化学物質を含むと、どうしても環境ホルモンなどの問題をさけて通れない。
 この間、農業高校の生徒さんを十七人連れて、先生が七人おいでになった。なぜ自然農業かという話をしてもらえないかという事で話していたら、先生が地球の人口が六〇億になった時自然農業では食糧増大に間に合わない。どっかで行き詰まるとおっしゃる。そこで私は、これだけ環境問題が叫ばれている中、お前たちはまだこんな先生から習うのか、先生の言うことは絶対うそだと思って授業受けなさい。そうしないとお前たちは行き詰まるよと言ったんです。
 何としても五十年前に帰って、自然農業を担う運動が始まらないといけないと思う。

半不耕起の実際

 まず、水田の中で一番悩んでいることは草だと思います。除草剤を使わない人の草の問題は、実際経験した者でないとわからないくらい苦しいものです。草の問題をどう解決するかということが一番になると思います。畑もそうです。
 六年前趙先生から不耕起という話が出て、理論的には正しいと思い試してみたけれど、草の問題はどうしても解決できない。不耕起というと千葉県の岩沢さんが有名ですが、除草剤はだいたい四回位まくそうで、完全に除草した所でしか成功しない。
 そこでどうしたらよいかという事で、半不耕起という方法をとったわけです。三センチということですが、機械で入るので四センチか、ちょっと深い所で五センチくらいになったと思います。趙先生は五センチ以上絶対耕してはいけないということでした。それから下が微生物の宝庫だということです。微生物の世界だけは一生懸命守らなければならない。ボカシの世界も微生物を応援しようとして、どんどん送り込んでいくという思いでした。
 三センチ耕すと言っても稲株の根を起こすとどうしても五センチにはなります。そこで四月までほっておくと、畑一面土が見えない状況になります。その時ボカシを入れてやると、ちょうどさっと草の根に入り込んで、非常に湿度もあるし、温度もけっこうある。井戸水と一緒で、毛管現象によって温度が上がってきますから、微生物は活発に動いて繁殖します。わずかなぼかしでも土壌改良できます。
 土の大きな特徴としては土壌浄化法という一つの方程式がありまして、水を浄化するとき一番重要なのは毛細管現象といいます。人間で言えば皮膚呼吸みたいなやつを土がするわけです。ところがそれを耕してしまうと切ってしまうことになる。そこで耕さない方が良いということになる。毛管が動いている間は温度コントロールがスムーズにいく。だから自分たちで耕して自分たちで作る農業はやめようじゃないか、いかに力を入れないで、自然の力を引き出すことに目をむけようじゃないかと私は言っているのです。すごいエネルギーがあるのです。生かそう、生かそうとするエネルギーがあるのです。

 ボカシをふってしばらくして、草の種がどうしても落ちて、これ以上落ちたら困るなというころ、初めて三センチ耕します。四月になりますと、表面だけけずる感じなので、根などは完全に残っています。ということで、三センチだと草はただ枯れるだけの状態ですから二回くらい耕起します。けずった位ですが。
 そういう耕し方をしながら代かき、それも三センチを重視する。ですからトラクターにかご車輪をつけます。二回かくとどうしても沈む所ができますから、一回で仕上げます。トラクターの足はゆっくりがいい。三分の一くらいのスピード。そしていっぺん水を落として十日くらい置きますと草の芽が出ます。ぱっと光を与えてやったことになるので、芽がぱっと出ます。そうして田植えの前にまた水を張ってもう一回代かきをする。きれいに仕上げする。そうすると草の種が風の向きによって一ヶ所に寄って来る。一反でバケツ三杯くらい。それをきれいに取る。草は双葉で根が三センチぐらいの。それで除草になる。
 もうひとつはそれで高い所もきれいになるし、トロトロ層ができる。カモを飼った人はご存知でしょうが、カモが田に入って一週間もすると表面がトロトロになる。あれには草は植わらない。
 趙先生が韓国のテレビ局の人と取材に来たとき、田植えから一回も田に入らないようにしておいたんですが、それでも草一本も生えなかった。こういう風にしたら除草の問題は非常に楽になった。これなら自然農法と言えども面積を増やしてでも出来る。若い人だったら一人三町くらいできるのではないかと思う。私は草の問題がなくなったから、一町七反で田んぼに入るのが、一人で三時間くらいです。
 後、アミノ酸を二〇キロばかり流してやれば、あと一俵は確実に上がるかなと思ったりしますが、全く自然に任せようという思いで何もしないでやっています。それでもだいたい一〇俵平均して採れてます。

<虫対策と施肥について>
 九州の場合は特に梅雨前線が横断して停滞しますと、ウンカの問題がある。分けつしたのをことごとく食うわけです。セジロウンカは子葉が出る付け根に卵を産みつけます。そこで産みつける前の頃には水を浅くして、その後水を高くします。それで大丈夫です。私は深水管理でやってます。
 稲葉光圀先生は開帳型の茎がたばこくらいの稲を作る先生ですが、韓国でも三日間一緒でしたが、私達のウンカ対策と先生の話がぴったり一致するわけです。深水の特徴は、まず草が目に見えない。分けつが開帳型の稲ができること。たばこぐらいの茎ができると穂は一八〇から二〇〇はありますから。
 自然農業をしていると、秋のトビイロウンカが来ます。それが来ない方法がある。例えば坪四〇株位の植え付けをすると、一株二五本で一坪千本でちゃんと抑える。後半ちょっと肥料がほしいなと思った時やられる。野菜と同じで体力が弱かったときに病気が来る。最後まで青々とした稲作りを心がけないと恐い。葉まで青々としていればウンカは来ない。
 自然農業は化学肥料をまかない訳ですから、ちょっと欲しいなと思う時に必ずウンカにやられるわけです。その時にボカシをやったり、上からかけるならアミノ酸、漢方栄養剤、ヨモギの天恵緑汁などをやります。時期は熊本では六月二十日頃田植えですから、七月二十五日頃が交代期です。交代は栄養も切らなければいけないので中干しをさせます。中干しをして交代期をうながしながら、また変えるというやり方をやっています。中干しは稲にこれ程ストレスのかかる作業はないので、さっとやる。三日干す程度にして水を入れる。九州では交代期の頃肥料を抜くどころか有機質資材、液肥でもなんでもいいからやる。一回やっておけばウンカはたいてい大丈夫。
 真っ青な状態を作っていることが、私の体験した稲作りの基準だと思う。そうするとウンカも何も心配しないで一〇俵くらいのものが出来る。農事歴を書くとすればそんなことを入れながら作ってみようかなと思っている。作物を育てる基準は稲を基準にすれば案外楽です。

問 一回目の代かきのロータリーの回転はどのくらいですか?
答 普通のロータリーですと四速です。
問 水の深さはどのくらいですか?
答 多めが良いです。少なくても五センチはないと土が良くなれない。
問 二回目はどうですか?
答 だいたい一緒です。
問 群馬は害虫にイネゾウムシとドロムシというのが稲につく。分けつが始まって最盛期になるとかなりひどい。葉から食べて最後には根の方まで食べてしまう。イネゾウムシは葉の青い所を食べ、ドロムシがつくと栄養が無くて立ち枯れたような状態になる。
答 九州ではあまりないのですが、ボカシを少し多めに入れて、微生物を活発に動かして地温を上げていく方法も寒い所では良いのではないか。ボカシをやると三度は温度差があると言われている。そして逆に非常に高温で三五度位に上がったときも、三センチしか耕してないところは地温は二二度〜二三度位です。気温の変化を稲にあまりあたえない。三センチですから根が下に行かなくてはならないので、気温が三三度でも中に入ると涼しく感じる。不耕起の原理が間違いないと思うのは、地温、水温コントロールをちゃんとしてくれるという事です。微生物をうまく繁殖させて環境作りをするわけです。
問 深水にすると稲が冷えて生育が遅くなるということはないですか?
答 それはないです。水生の植物というのは根に穴を持っています。どんなに深くても酸素はちゃんと来る。何も心配はない。みごとな稲になります。
問 一回目の代かきのときにボカシを入れても大丈夫ですか?
答 その時入れても大丈夫です。私は二〇〇〜三〇〇キロ入れる関係で耕す前に入れる。
問 ワラはそのまますき込むのですか?
答 そうです。春先までです。連作しないなら、そのまま雑草がある程度植わってくれた方が良い。
問 耕し方とボカシと微生物の働きが味に関わっているのでしょうか?
答 それに間違いないと思う。作り方としては雑な作り方ですが、ボカシをあれだけ入れるので「おまえたちが頑張ってくれ」という思いだけで、他には何もしないのでそれしかないと思う。
問 冷たい所でも大丈夫ですか?
答 条件が厳しい所ほど耕しちゃだめだという事です。水が冷たいとか温度が非常に下がるような場所は耕さないのが原点だと思います。根は耕さない方が太い。半不耕起なんて作物が育つはずがないといって根だけの調査をしたら、ガチガチの田んぼでも四七センチ位根が張っている。
問 春、代かきして、水を張った場合わらは浮いてこないですか?
答 ないです。ボカシを入れるので有機質に食いついて吸収していきます。
問 除草剤を使わず米ヌカをまいたがどうでしょうか?
答 米ヌカの場合もボカシを使うのと状況が似ている。米ヌカの除草というのは乳酸菌などを利用しながらやっていくのではないかと思う。
問 ヒエはどうですか?
答 ヒエも三センチ耕してトロトロ層を作ると草の種が沈んでしまう。自然農業をやっている人達は水田も畑も草だけ安心してできるところまでこぎつけてやってもらうのが楽しいと思う。草で泣く間は自然農業じゃない。ちゃんと自然が教えてくれます。
問 苗の作り方でポイントはありますか?
答 苗の作り方はあまり上手じゃないのですが、ただボカシを下に敷くので、床を均平にしなくてはならないみたいです。まだらな苗になってしまう。趙先生は処理液に八時間から一〇時間以上浸けたらダメですよとおっしゃるが、何回やってもうまくいかずまだらになってしまう。やっぱり三日位浸けて、鳩胸状態のをまいた方がそろう。
 今年、ばか苗対策で温度を五七度くらいに上げて四時間ばかりつけたら大丈夫だった。自然農業の場合は何かしないと半分ばかりは実らない。そのことはもうちょっと勉強しないといけないと思う。五度くらいの倉庫で一週間も浸ければ、すばらしい発育をするそうです。東北の方では、十分に寒さを覚えると、どんな寒い時でも温度が五度くらい下がっても発育が変わらないそうです。

野菜作りの草対策について

 今はハウスが全盛ですが、本当は旬のものを地場でとれたものを食べるのが体にはいいわけです。そこで露地の野菜作りにライ麦を活かす方法をやってみました。ビニールマルチはダイオキシンの問題があるので、ライ麦はいいと思います。
 ナスビ、キュウリ、ピーマン、トマトは一反当たり一〇キロライ麦をまく。ライ麦は発芽が良く、カラスが来ない。一メートル八〇ぐらいになる。北海道の品種なので寒い所でも大丈夫。春先に苗が出来る、いろいろなものを植える。トマト、ナスビなど植える所だけよけて二〇センチ間隔で植えます。そうすると遅霜が来ても、回りをライ麦が覆っているから大丈夫。カボチャとかキュウリなどは苗を植えたらすぐ、ライ麦の中に寒冷紗でも掛けておくか、葉っぱを乗せておけば発育も早いし、遅霜でも恐くない。
 そういうやり方を今年やってみました。全く草が一本もありません。秋までどうなるか確認したい。畑に草取りがなくなる状態になるのは初めてです。
 


特集「やってみました後藤方式」
                      「プリ26号 1998年10月」

後藤方式実践報告
新潟県豊栄市 宮尾浩史


 私の住む豊栄市大月という部落は、八月四日の集中豪雨で一一六○ヘクタールの干拓地が
水没した福島まで約二キロメートルのところにある海抜〇メートルの稲作単作地域です。昔
は潟に続いていたそうで、草は良くできるのですが地盤が悪く、こういうところで熊本の後
藤さんのような除草剤に頼らない米づくりができたら何と素晴しいことだろうと思いながら
稲作をしております。
 四年間、半不耕起を目指して三センチに耕すことを心がけてやってきました。乾田状態で
は浅く耕すことは可能なのですが、水をはってから入ると、どうしてもトラクターがめりこ
んでしまします。カゴ車輪をつけてものめり込みはかなりあり、とても半不耕起と呼べるよ
うなものではなく、ほとんど普通耕起の浅耕起状態で妥協していました。
 トラクターの足の速さも自分の作業の都合にあわせてやるもんだから、普通の代かきより
ちょっと遅いカナくらいの程度ですから、トロトロ層はうまくできておらず、当然草はとて
も良く生えてしまうのでした。
 今年の二月、自然農業の全国大会の帰りに後藤さんが来てくださって、新潟で講演してく
ださいました。今まで自分の勝手な解釈で半不耕起をとらえていたナと思うところがあり、
それを実行するべく「今年こそは」と勇気をもって「後藤方式」に挑戦しました。

@ボカシ散布(昨年秋〜今年春先)
 米ぬか、油かす、ようりん、貝化石と、竹やぶや山の腐葉土、田の稲株、アミノ酸と乳酸
 菌をまぜて発酵させたものを反当り二○○キログラム前後散布しました。
 ボカシづくりもまだまだ未熟なので、集められる資材、発酵の状態など、もっと良いもの
 ができると良いナと思っています。
A乾田ロータリー耕(五月上旬)
 ミゾを掘ってよく乾かした圃場をロータリー耕。さく土は三センチ以内を目指しました。
 地面の凸凹によってはトラクターがゆらいで、稲株が残ってしまう所もありました。
B荒代かき
 ドライブハロー、カゴ車輪をつけて、水はかなり多めに入れて代かき。
 TPOは2、足はゆっくり。代かき後ミネラルA液を反当り○〜2本ふる。

*荒代から本代までの日数
ア)二日間おいたところ
・草の発生は見られなかった。
・トラクターののめり込みは少ない。
イ)一週間おいたところ
・ヒエとコナギがある程度発芽。
・トラクターののめり込み多い。

*ドライブハローの刃の深さ
a ドライブハローの刃は、これぐらいしかさく土層をかいていない
水の表面  田の表面 GL タイヤののめり込む深さ
b さく土層全層の深さ ハローの刃がさく土全体をかいている

C本代かき(五月中旬)
 PTO は2、足はゆっくり、水の深さは三センチ〜四センチでかなりガボガボ状態で代か
 き、水が濁って目印が見えず代かきが難しかった。

結果
ア)でaのところ
 水をはっている間は草の発生がほとんど見られなかった。
 GLの盤が固いのでトラクターののめり込みが少なく、他の草も(圃場によって草はいろい
 ろ)発生しました。
イ)でaのところ
 荒代後一週間もするとトラクターがかなりのめり込むようになるが、深くなってもかまわ
 ないという感じでなるべくさく土層全体をかくことを心がけた圃場は草の発生が少なかっ
 た。
ア)イ)でbのところ
 ミネラルA液をふったところは田植え後三〜四日でヒエの芽、コナギの芽が発芽、除草機
 をおしたところもあったが、ひどいところは除草剤で対応。

まとめ
  さく土の層をいかに浅くできるか、又、さく土の層全体をいかにトロトロにできるかが
 大切ではないかと感じた。
  又、ミネラルA液をふったところは、ふらなかったところより草の発生が早く、田植え
 後の苗の初期生育が順調だった。
  又、鶏の冬の緑餌として用意したヨシのサイレージがあまったので、それをバラまいた
 田は荒代をかいて五日くらいすると、土がもり上がったような感じでトロトロ、ツルツル、
 フワフワの土になった。
  私が今感じていることは、地盤を固めること、ボカシの質と量、ミネラル液、代かきの
 水の深さ、代かきのやり方(ドライブハローの深さ)。などなどがトロトロ層をつくるポ
 イントではないのかナと感じています。
  私の他の圃場では地盤が悪く、後藤方式に取り組めないでいる田もありますが、これら
 のポイントをおさえて、一回で代かきを仕上げることが、もしできたら、やれるのではな
 いかと思っています。

 今年は私の地域では水害や、夏の日照不足等の影響で、穂が短く、粒数も少ないと先輩の
方が教えてくれます。私の圃場では、分けつ数、穂のできも、これまでの自分の稲作では経
験したことのないような良いできになっています。まだ稲刈りをしていませんので、収量は
どれくらいになるかわかりませんが「おまえのところは良くできたな」と先輩がほめてくれ
ました。うれしいことだと思います。
 後藤さん、宮尾は今年はこんな報告をさせて頂けるようになりました。遠くに居る未熟者
にまで、いろいろ親切にしてくださって本当に有難うございます。
 これからも、一歩でも少しでも、大先輩に近くなるように精進していきたいと思います。


草の発生は年々減ってきた
宮城県色麻町 戸叶 理


 梅雨明け宣言が見送られ、夏のない年になってしまた当地では、秋色が足早に深まってい
ます。五○%以下の日照の中、作柄は思わしくありません。おまけにこの台風で、踏んだり
蹴ったりの状況です。
 私が韓国自然農業と出会ったのは、平成七年七月の第七回基本講習会でした。まだまだ入
り口で、右往左往しています。でも、九年三月の専門講習会での約束は、しっかりと守って
います。それは、禁煙です。もう一五ヶ月になります。
 さて今回は、水田の除草に限定して述べてみます。品種は、ササニシキとひとめぼれです
が、何れも完全無農薬栽培です。一年目は半不耕起で取り組みました。除草機を二回押し、
手取り二回通算三十日間行いました。いわゆる、後藤方式を知った二年目は、手取りは一四
日で一年目の半分で終えることが出来ました。そして今年三年目は、去年の方法+土着菌ボ
カシの追肥ートロトロ層形成を図るーを加えました。
 その結果、除草機は二回掛けましたが、手取りは三日間で済みました。なお、当地では後
藤さんのお住まいの熊本とは違い、二回代かきでの抑草は、田植え時期とその気温から考え
て難しいようです。また、水管理は、一年目は間断潅水、二、三年目は常時潅水五〜十セン
チとしました。
 この三年の経験で、もう除草は心配なしとは考えていませんが、手応えは十分で、来年以
降の草の発生状況が楽しみです。


後藤方式だけでは難しい
山形県藤島町  志藤正一

九八年半不耕起二回代かき稲作栽培記録
面積八○a、品種ひとめぼれ
育苗
 塩水選後、温湯法で種子消毒、一二日間浸種
四月一一日 種子処理(ヨモギ天恵緑汁、漢方栄養剤、ミネラルA液)
  一二日 芽だし
  一三日 播種一二○グラム播き(床土にリン酸ボカシ又は放線有機)

本田
四月 八日 養豚堆肥八○○キログラム、土着菌ボカシ一五○キログラム散布
四月二七日 耕起五センチ
五月 五日 一回目代かき
   六日 ミネラルA液散布
  一九日 二回目代かき

田植え
五月二一日 葉令三・五葉、三〜四本植え 六○株/坪

管理
 植え付け後二十日間は慣行と同じ。その後(六月十日)深水
六月一一日 追肥、放線有機(ウズラの糞を発酵乾燥した肥料)
      一五キログラム/一○a(N 一k)
  二一日 除草機
  二五日 追肥、放線有機一五キログラム/一○a(N 一k)
 二八日 交代期処理(天然カルシウム、第一PK、真珠水D液)
七月 五日 追肥、放線有機一五キログラム/一○a(N 一k)

結果
 トロトロ層が形成されたのが六月中旬以降となり、ヒエ、クログワイ、コナギなどの雑草に
完全に制圧された。
 特に半不耕起二年目のところが雑草が多い。昨年からの雑草種子の持ち込みが多いためかと
思われる。
 稲の茎数少なく、収量はかなり落ちると思われる(一○a/四〜五俵?)
 来年度以降は、カモと半不耕起の組み合わせ等を考えないと安定した栽培は望めないと思わ
れる。


多年生雑草は出たがヒエは抑えられた
山形県鶴岡市  小野寺喜作

実施面積:30a 品種:はえぬき

三月二○日 ぼかし作り(自家種菌・米ぬか・魚かす・油かすなど)
      好気発酵(切り返し)後、放冷
  三○日 自家発酵鶏糞を追加し再発酵(上を紙袋、ビニールで覆う)
      切り返し 数回
四月 一日 ポリ袋につめ口を閉じる(嫌気発酵)
  二二日 ボカシの本田散布 一○○〜一二○キログラム/一○a
五月 二日 耕耘 できるだけ浅く
   三日 水張り(ひたひた水でずーっと張りっぱなし) 
       (この間ヒエ等雑草がかなり茂っていた)
  一七日 代かき 水は多めで、ゆっくり、高速で
  一九日 田植え
       (水は落としていない)
  二四日 EMぼかし「穀菜村」散布 八○キログラム/一○a
       (この頃ヒエは一葉位)
      ヒエの生育が二葉位でストップ(抜き取るとゴボウ根)
      一週間くらいでトロトロ層が形成されたことになる
      多年生雑草のトシミ(ミズガヤツリ)は多発生
*刈り取り期になってもヒエはなかった。
*今年は育苗の段階からイネミズゾウムシにやられ、茎数が取れなかったので収量はよくなか
 った。
*ぼかし散布後の水温のあがり方がポイントかと思う。
*二回目のボカシ散布が大変だったが、このやり方で除草ができると、ある程度の面積をやれ
 ると思った。(この他にアイガモで六○aやっているが、準備や世話が大変)
*気候(水温・天気)とのからみ、散布時期など未解の部分がまだ多くある。
*来年は多年生雑草の少ない田をえらんで実施してみたい。


二年目、試行錯誤中です
広島県三原市  坂本重夫


 後藤方式の稲作を知ってから、2年目。それまでは、合鴨と紙マルチで、おもに除草対策を
していたが、それに半不耕起の後藤方式が去年から加わった。
 去年は、15aの田で試して、草はひどくはなかったが、ひえ取りに、2、3日かかるくら
いの草が生えた。
 今年は、合鴨と鯉で70aを、後藤方式で70aをやってみた。まだ、自然農業の経験も浅
く、参考になるかどうかわからないが、これまでの経過を報告してみることにする。

 3枚の田で行い、それぞれ、うまくいった、いかなかった、その中間、という具合で、どこ
にその原因があるのか、これから考えようというところ。
 @うまくいったところ(25a)
 秋耕こしはせず、3月、4月と、2回耕した後、5月19日に水を入れて荒代かき。
その前に、ボカシ反当200キロ振っておく
 ドライブハロ−で、できるだけ浅く耕すつもりでも、後藤さんの言われるように3〜5セン
チの浅耕は難しい。機械が適当に上下するので、深くなったり浅くなったりしながら、平均し
て5〜7センチというところか。この後、浅水にして、ミネラルA液を反当1L、2日後に振る。
 そうして、10日後の5月29日に、植代かき。この間に生えた草は、主にヒエ。小さいの
が、ツンツンと結構生えてたが、すきこむようにして、みなきれいになる。
 できるだけ浅くハロ−をかけ、回転も早めて、トロトロ層を作るようにするが、できているか
どうかは、自信がない。
 この後、6月3日に田植え。品種は、ヒノヒカリで、30日苗。田植え後、できるだけ水を
深めにして、ずっと維持していくようにする。
 この後の草は、少なく、ヒエが生えてはきたが、4時間でとれるくらいの量。田面が高く、
水が浅くなってしまうところはやはり草が生えてくる。水を深く保つことは重要なことだ、と
いうことがわかる。
 除草では、ここはうまくいった例。稲のできも悪くなく、9俵前後というところ。

 Aうまくいかなかったところ(25a)
ここは、コナギに覆われてしまったところ。@とちがうのは、5月26日荒代かき、6月8日
植代かきと、間隔が13日あいて、その間にコナギがもう沢山生えてきていた。
 植代かきで、そのコナギが水面に浮いたがその後から、コナギがまた生えてきた。1ヵ月後
には、コナギの絨毯となってしまった。ここは、紙マルチで3年やってきたが、マルチがやぶ
けたあとはコナギがまた生えてきて収穫の頃には、やはりコナギで被覆されている状態だった。
 つまり、コナギの種の絶対量が多くて、どんどん生えてくる状態ではないか、と思われる。
 水は、深水で維持したが、コナギには効果がない。しかし、ヒエは全くといっていい程生え
なかった。
 収量では、ここは最悪で、4俵とれれば、いいという出来。
 B中間のところ(20a)
 5月25日に荒代かき、6月6日に植代かきで、11日、間をおいた。
 このくらいの間隔で、草は結構生えて、すきこむのにも適当な大きさと言える。
 ここは、草が抑えられた所と、草が生えた所と分かれた。草は、やはりコナギが多かったが、
ヒエも一部、生えた。
 前の年も、コナギが生えた所にコナギが多いので、やはり、種を落とさないことが大事では
ないか、と思う。深水が維持できれば、ひどい草にはならない。
 コナギの多い所は、稲も分けつが少ないので、出来が悪く、ここは7俵くらいの出来。

 後藤方式2年目で、まだとろとろ層を作れているところまでいってない。草が生えても、埋
没してしまうという、とろとろ層を、いかに作るかが、これからの課題と言える。
 また、浅く耕す半不耕起の効果の他に、ボカシの効果もかなりあると思う。田植え後に、水
面に緑色の藻が覆ってきて、田面を覆い尽くして、草を生やさないという現象もよく見られる。
これは、ボカシの影響か、と思われる。
 それと、大事なのは、深水を維持していくことであろう。
 田の均平が十分でなく、浅くなってしまうところは、やはり草が生えてくる。畦を高くし、
均平を十分にし、深水を保てることが、前提条件になる。
 ただ、コナギだけは、いったん生えてくると、なかなか減らず、年々増えてくる感じがある。
 最後に、誰かコナギ対策のいい方法があったら、教えてください。


今年のイネもすごい(ウンカと山分けになりそう)
熊本県千丁町 園田崇博


 後藤方式稲作も二年目になり、草の心配はなくなったが、虫が心配で、今年アイガモを入
れた。しかしカモを取り出したあとにウンカが寄ってきている。ニンニクと木酢で一応は抑え
たが、本年の異常発生の状況ではまだまだ心配です。主な管理としては昨年と同じです。

普通田の管理(イ草後ではない田)

六月 一日 土着菌ボカシ 二○○キログラム/一○a
   二日 三センチ耕起(ドライブハロー)
   八日 荒 代   (ドライブハロー)
   九日 ミネラルA液一リットル、ワカメ天恵緑汁一リットル/一○a
     (この時点ですでに草の出はなかった)
  一八日 植 代   (ドライブハロー)
  一九日 田植え
七月一八日 交代期処理 (第一PK一○○○倍、天然カルシウム一○○○倍、ワカメ天恵緑汁
      五○○倍、玄米酢五○○倍、漢方栄養剤五○○倍)
九月 二日 実 肥   (海水三○倍、第一PCa一○○○倍、天然カルシウム一○○○倍、
      ワカメ天恵緑汁五○○倍、玄米酢五○○倍)
       (ニンニクエキス二○○倍、木酢二○○倍)
   十日 ニンニクエキス二○○倍、木酢二○○倍散布

*草は昨年は一本も出なかったが、今年は残念ながら二○aでヒエ2本出た。(記念に残してい
 る)
*イ草後の田の方も除草剤は一切使用しなかった。(昨年返品したから使えない)荒代、植代、
 一日かきで二ヘクタール中、三○アールの田に半日かかるほどヒエが出ていた。(「どうし
 たら草が生えるの?」ともう言えなくなった)残りの田はほとんど出なかった。(まだ中に
 足を入れていない)

イ草の半不耕起栽培実践報告
 イ草も、後藤方式を取り入れ半不耕起で行った。四センチ耕起で、元肥にボカシ二○○キログ
ラムと天恵緑汁を入れ、植え付け後、ガスが発生した。そこでカルシウム、玄米酢を散布した所
収まった。その後根の動きもよく、春のガス障害による断根もなく、地割れも少なくよかったよ
うです。
 草は地干しをするのでたくさん出て手取り作業におわれた。シンムシガ対策としてニンニクエ
キスと木酢を散布したら、粒剤一粒も使わずに穂がいもなかった。(今までは粒剤四キログラム
を三〜四回やっていた)
 九州東海大学の収量調査で片野學先生が見えて、根を三五センチ鉄わくで掘り取り、掘り取っ
た土に酸素の試験液をかけられたら、下は全然酸素がなかく、耕した四センチ部分にしかなかっ
たと言われ、がっかりしたら、後藤清人さんの田んぼの土と同じだと言われにっこり。(片野先
生によると、一般の耕した田は表層数ミリしかこの酸化層がないそうだ。この酸素の層の意味に
ついての研究はこれからとの事)三五センチの所で根が切れているのが見えた。これはまさしく
イ草の根だ。自分でびっくりした。
 収量は少なめでしたが、タケノコの天恵緑汁、海水、天然カルシウム、ミネラル液、ニンニク
エキスなど散布したせいか、つやのある非常に良いイ草が取れました。
 また、半不耕起ですと土が固いので、足がめり込まずネット張りなど、田の中まで入って行う
作業がとても楽でした。

<ニンニクエキスの作り方>
一番しぼり ・皮をむいたニンニク5Lをミキサーでする
      ・焼酎1升(35°)とお湯で溶いておいた白砂糖2L(黒砂糖がいいかわからない)
       を容器に入れ、水を12〜13P入れて全体で20Pになるようにする。
      ・一日に一回かき混ぜる。7日くらいででき上がり。
      ・ざるか布でこす(しぼる)と緑色の汁になる
二番しぼり ・こしたニンニクと焼酎5合とお湯でといた砂糖1Lを入れ、容器に全体で10Pに
       なるように水を入れる。
      ・一日一回かき混ぜる。7日〜10日ででき上がり。
      ・ざるか布でこす(しぼる)
*一番しぼりと二番しぼりを混ぜて使用。


草が一本も生えないなんてびっくり
熊本県千丁町  黒木一徳


 私も去年から後藤さんの半不耕起をやっています。除草剤もやらずに草一本も生えないなんてびっ
くりしました。
 田んぼは三六アールあり、その半分を水稲、あと半分がイ草の苗床にしています。
 この水田は毎年クログワイ(カヤツリ草科)という草が田んぼ一面に生える所で、一昨年前までは
田植えして一週間後に除草剤を四、五キロやって、それでも完全には死なないのでまた後からバサグ
ランという除草剤液を散布していました。
 この草は球根で増えていく草でなかなかやっかいな草だったのですが、後藤さんの半不耕起を去年
からやって、それが一本もはえなかったので、とてもうれしかったです。
 今年のやり方は
六月 一日  耕起(ワイドロータリーで三センチ位耕起)
  一○日  土着ボカシ二○袋
       荒代  ワイドロータリー
       夕方  ミネラル A液二リットル、ワカメ天恵緑汁一リットル原液散布
  二一日  植え代 ワイドロータリー  TPO2
  二二日  田植え 
 以後水を入れて、途中三日位干した後は水入れっぱなし。

 半分のイ草苗床もいっしょに作業しました。イ草の苗は八月の上旬に植え付けするので、七月十日
ごろからは干しっぱなしにしていましたが、草がほとんど生えませんでした。
 八月三日に水を入れて植え代をかき、八月五日から植え付けをしました。
 イ草の苗は八月の厚い時に植えるので活着がしにくいので、水の入れかえをまめにします。近所の
人達は植え付け三日後には除草剤を散布するために、ため水をしなければなりませんが、私の田んぼ
は一ヵ月位は草が生えてこないために、ため水をしなくてすむので活着もよく、生育がよいようです。
これも後藤さんの半不耕起のおかげと、とても感謝しています。

 日本自然農業協会事務局
 自然農業情報センター 姫野祐子
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