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(資料1)アンケート
(資料2)天祥米
(資料3)クエン酸
(資料C)やまちゃんの井戸掘り奮闘記
(資料5)福井県鯖江市の藤本さんの育苗
(資料6)お米の勉強会
(資料7)テーラー型除草機
(資料8)宇根豊「代かき法」(農文協「除草剤を使わない稲作り」)
(資料9)宮原益次「コナギ」(全国農村教育協会「水田雑草の生態とその防除」)
(資料10)熊本の後藤清人さんの稲作り
(資料11)農工研の嶺田拓也さん「雑草対策の基本技術」
(資料12)改正農薬取締法に関する農林省との質疑応答(By 日本自然農業協会の姫野さん)
(資料13)岡山の赤木さんのU型栽培法・申請書類
(資料14)BDF燃料-エチルエステル法(林さん訳)
(資料15)農と自然の研究所の宇根豊「農水大臣の重大発表に注目を」
(資料16 自然卵養鶏・自然養鶏での病気対応のあり方」
自然卵養鶏 自然養鶏での病気対応のあり方 「あしがら農の会」 笹村 出
「強毒型鳥インフルエンザに関して」今起きている状況の説明と、とるべき対応策を書かせていただきます。今回の事態は私たち自然養鶏を行うものにとって、生活のかかった大きな岐路になると思います。
現在、鶏に関して間違った獣医学に基づく、病気対策が法律化されています。ワクチンで予防する事を絶対として、義務化しています。ところがワクチンでは対応できない病気は無数にあり、今後も出現する可能性は高いと思われます。大変虚弱に成っている今の養鶏用鶏種をケージ飼いすれば、忽ち、病気が蔓延することに成ります。畜産のあり方全般に対し、徹底的な見直しを行う事が急務と成っています。
しかし、いかにもこうなってから問題にするのでは、状況が悪すぎます。5年前「発酵利用の自然養鶏」の中で、この問題を予測し発言した時、ある鶏の会を除名されました。場合によっては法に触れ、飼育が出来なくなる可能性のある発言の為です。ここでもその覚悟で発言する内容です。これはあくまで笹村個人の考えであることを確認しておきます。
私の予測した通り、動物由来ではないかと言われる、新しい病気が次々に、エイズ、SARS、BSE、サルモネラ、鳥インフルエンザ、と出現しています。
何故か、先ず原因調査を徹底しろ、と言いながら結局曖昧に終ります。今回もそうなるに違いありません。それは渡り鳥由来だ、となると、今までの対応策を根底から変えなければ成らないからです。すでに根拠もないまま、渡り鳥説否定の予防線を張っています。こうした時一番の問題は、せっかちで忘れやすい消費者に追随する、風評被害を生む、報道関係者の情けない姿勢です。
鳥インフルエンザの発端が野生の鴨、或いはその周辺の野鳥にあることだけは確かです。鴨はこの抗体を持ったものがいることが確認されています。日本の鴨からも弱毒タイプのものは見つかっている、という情報があると、畜産保健所の方が言われていました。野鳥は発病しても、大量死することはありません。勿論餌付けで集めるような日本のやり方は自然とはいえないでしょうから、大量死の原因になっているかもしれません。いずれ野生は抗体を獲得するか、弱れば淘汰されてしまうかでバランスがとれる、自然の仕組みです。そうやって、自然界の免疫システムは出来ていて、人間がかかわらなければ、上手く調和するようになっています。ハクビシンがSARSで問題がないのと同じで、人間にだめだからと言っても、他の野生の生き物では克服されています。鶏ではサルモネラ菌がそうしたものでした。人でも東洋人の方がサルモネラの発病の可能性は低いとされているようです。
それでは何故こうした新しい病気が出現してくるのか。この原理を考える必要があります。当然、野生動物の生肉を食するようになったからではないでしょう。大枠で見ると、人間が弱くなってきた事があげられます。O157の流行時、そうした大腸菌に弱くなっている現代人が問題にされました。おかしな衛生観念のため、「自然免疫の獲得が出来ない人類」の出現です。水道局では確か、塩素の濃度を上げるという対策をしたはずです。そういえばあの時も貝割れ大根に責任を押し付けて、ごまかして終わりでした。貝割れ大根の会社が農協と対立していたのが原因だった、と言うような馬鹿げた話が後でありました。
もうひとつは「化学物質による病原菌やウイルスの変異が推理される」と考えるのが、妥当だと思います。弱毒タイプのウイルスの強毒への変異が増加している根拠です。化学物質は農薬もあれば、焼却由来のダイオキシン等、エントロピーの増大で、無限に増加している新しい化学合成物質が想像されます。環境ホルモンと言うようなものも影響しているのかもしれません。科学的に考えれば未解明分野で諸説はあるでしょうが。私達実践者は体験的な直感的な類推をする立場に立つべきです。畜産では飼料の単価、飼料効率、機械化、廃棄物の再利用等の為に、本来自然界では食べないものを無理やり食べさせる事になっています。保存料や添加物、消化促進剤のような危ういものが紛れ込む危険が潜んでいます。過去に大きな問題になった、抗生物質と殺虫剤を畜産で大量消費する中で、耐性菌の出現があり、ウイルスや病原菌の変異が呼び起こされ、禁止されてきた経緯が思い起こされます。ともかく、合成化学物質は極力減らす事でしょう。
シベリアに暮らす鴨にとっては韓国もベトナムも日本も生活の場ですから、当然行き来しています。鴨が持っているウイルスは、必ず他の野鳥に感染していると見なければ成りません。人間に発見されているかどうかは別にして、自然界には人の知らない病原菌を含めて、様々な病原菌が存在すると考えるのが普通です。何処にだって病原菌はあるのですから、アイガモや放し飼いの鶏に感染するのは必然です。昔からそうだったのです。それで異常な蔓延が起きなかったのは、自然のバランスの中で行われる範囲では、何羽かが死んで、免疫を得て生き残ったものが次世代の親に成り、永続性のある畜産が行われていたのです。
可能とは思えませんが、飼育している鶏を全て隔離し、ワクチンで感染を防いだとしても、鴨から野鳥への感染を防ぐ事は出来ません。そこでの強毒化したインフルエンザはどうなるのでしょう。公園の鳩からの感染はどうしたらいいのでしょう。かつてそうした事が問題にならなかったのは、自然界ではバランスが取れてきたことであって、大規模養鶏が登場して問題化したということは、大規模養鶏のやり方のほうに問題があると考えるべきでしょう。
鶏を野鳥から遮断しようと言うのが今の防疫の発想です。ウインドレス鶏舎で、できるだけ無菌状態の閉鎖した飼育をして行こうという流れです。実はこれは大企業が待っていた、作り出そうとしている流れなのです。日本に養鶏業は飼料会社直系の10軒でいい、と豪語していた人を知っています。読売新聞などはすでにこうしたお先棒の記事を載せました。見識のない恥ずかしい新聞です。よく考えて見て下さい。鶏がウインドレスで薬漬けでしか生きられないとしたら、人間は大丈夫なのでしょうか。
この先待っているものは、人間がウインドレス室の中でしか生きられない世界です。今畜産で起きていることは、必ず人間におきて来る事の前触れです。SFの世界ではありません。今起きていることは人類の史上初めての事態です。人間が自然の中で生きられなくなっている。環境を遮断して病原菌の居ない無菌に近い状態でしか安全では居られない。新しい時代の登場です。
こうした状況の中、家畜保健所は消毒を徹底しなさい。放し飼いはいけません。野鳥が入らないように。と指導して歩いています。消毒薬の大量輸入が報道されています。国内の会社も増産中でしょう。何と言う浅はかな事でしょう。鴨や烏やスズメも病気発生の30キロ以内を絶滅しようと言う事でしょうか。今、泡を食ってやっている目先の対応は、この場は凌ぐかもしれませんが、必ずもっと深刻な状況がこの先来る事は目に見えています。自然界を消毒して病原菌の居ない世界にし様などと言う発想は、天につばを吐くことでしょう。「沈黙の春」の世界が現実になってきています。
病原菌は存在しているのが当たり前です。人間が生きると言う事は、病原菌とどう折り合いをつけていくかです。私のところの鶏は、ニューカッスルの抗体を持っていました。一切のワクチンをしていませんから、私のところで孵化した鶏は、野外毒から感染したはずです。しかし、発病した徴候はありません。ニューカッスルになれば大半が死滅すると獣医学では考えています。抗体を持つことは免疫システムであり、発病とは違います。ワクチンをしていないのに野外毒によって接種したと同様の免疫力を得ているということです。今度の鳥インフルエンザも同様です。感染はしても発病はしない自信があります。そして免疫を獲得する。私はそれだけ強健な種、「笹鶏」を作出目標にしてきました。
又その自然免疫を獲得する飼育法を模索してきました。自然界には免疫を獲得する仕組みがあります。自然養鶏ではそれを応用した飼育法をとる必要があります。野外毒を遮断するのでなく、孵化直後から、いわば微生物に満ちた堆肥状の床の上で育雛します。適正なレベルで、親の免疫がある間に、その場所にいる菌に触れさせてゆきます。そして、発酵飼料、緑餌、生餌、薬草、ミネラル、等を使いながら。健全ではあるが甘やかさない、ぎりぎりの飼育をしてゆきます。弱い雛はここで淘汰してゆきます。その結果、自然免疫を獲得する、能力の高い鶏が作られることに成ります。それには少羽数で目の届く管理をする必要があります。私の経験では春先、自家採種した卵を孵化するのがいいと思います。
こうしたいわば江戸時代におこなわれていた、村落ごとに地鶏が居るような小規模で、自然に適合した方法でしか、家畜を永続的に飼育することは不可能のようです。
さらにひとつの岐路があります。食べ物が柔らかく甘く濃厚に、消費者に迎合してゆきます。消費者は私から見ると食べ物とは言いたくないような、60日雛の鶏肉を、柔らかくておいしいなどと言います。1年の「笹鶏」を硬くて鶏肉として使えないと言います。お世辞ではおいしいと言ってくれますが。二度買いに来ない人が大半です。本当の食べ物は健康的な食べ物のはずです。効率だけを重視して、2ヶ月で食べてしまう鶏は、2ヶ月だけ生きていればいいのです、強健さは無視されています。私の作出した笹鶏は産卵率で考えると60%行けばいいという能力です。世間の産卵鶏は90%を越えるわけです。産卵率だけ高ければ、病気に弱い事など、薬で対応すればいいとされています。本来農村でその地域に適合していた強健な鶏種は、今やどこにもいないのです。だから一個10円の卵が出現して、卵は物価の優等生などと、馬鹿げた事が起こるのです。
こうした消費者を背景とした畜産の世界で、効率と採算性だけに翻弄されて、作り上げられたのが、ウインドレスの畜産です。そうした尋常でない環境でのみ有効な、異常な飼育法および鶏種が、アジアの農村にも一気に広がったのです。ここでのやり方は山口での方法と大きくは違いません。今アジアで起きている、鳥インフルエンザの猛威はまさにケージ飼い養鶏の不健康さから直接的には起きています。山口の養鶏場も同様です。こうした劣悪な環境での鶏のケージ飼育はヨーロッパでは禁止している国もあります。卵を産み機械のような狭いおりで身動きも出来ず、卵だけを産みつづける悲惨な状態では、鶏に病気を克服する力はありません。こうした鶏と自然養鶏の鶏と同列に議論して、野鳥と触れるから危険だと斬り捨てるのは暴論です。鶏種は大企業にすでに独占されています。何処に行ってもアメリカかヨーロッパの鶏種です。種鶏会社はより大きな消費者に合わせた、効率は良いがひ弱な飼いにくい鶏種を作り出しています。異常な病気が出現して来る背景は進んでいたのです。
私が5年前に提言した時、世間は対応してくれなかったのが、残念で成りません。こうした状況に及んでは戦いは、極めて不利に追い込まれていると言えます。妥協的な対応しかできなかった、その付けが自然養鶏にも及んできています。鳥インフルエンザが人間に感染する、此の点が非常に恐れられるため、もう5年前の主張では通用しないでしょう。鶏ならばある程度自然淘汰され、バランスがとれるという考えが通用しますが。
「対応策です」
地域に適合した、強健性のある鶏種の作出を行う事。
畜産はできる限り小規模で自然から離れない方法で行う事。
合成化学物質の増大を防ぎ、飼料への混入を禁止する事。
地球規模で実現できるよう、日本がその模範になる事。
文化として、「人間の暮らしに於いて食の安全とは何か。」という根本から考えれば、精神文化まで含めて、食糧の生産が暮らしのレベルから見えなくなるということは、大変危険な事だという認識が必要です。そして、人間も最後に病院で薬漬けになって生き永らえるのではなく、健康な体と精神力を持って病原菌に負けない免疫力を付けることが必要です。そして病気になったら死ぬのが自然であると言う事を受け入れて、病原菌に向かい合う必要があるところだと思います。
「環境政策の基本方針」のどこが、画期的か。
宇根豊(農と自然の研究所:代表理事)
N-une(アットマ)mb7.seikyou.ne.jp
http://hb7.seikyou.ne.jp/home/N-une/
アメリカのBSE騒動で、すっかり霞んでしまって、マスコミ報道もほとんどないが、もっと重大な発表を、去る12月24日に亀井農水大臣が行った。それは「農林水産環境政策の基本方針」というものだ。この方針を論評する。
1、環境農業政策とは何か
従来の政策は、ほとんどが「生産政策」(カップリング政策)だった。なぜなら、「生産」によって所得を確保してきたからだ。しかし、経済発展によって(貿易の拡大によって)生産物は過剰になり、価格も低下してきた。これでは、所得は確保できない。WTO交渉で、生産振興・価格支持の補助金は削減の対象ともなった。そこで登場したのが、「環境政策」なのである。生産によってではなく、環境支払いによって、直接所得を確保しようという考え方である。(いわゆるデ・カップリング政策だ)もちろん、これはヨーロッパの話であるが、とうとう日本でも本格的に、「環境政策」へと舵を切るとこの方針で表明したのだ。
だから、アメリカのBSE発症など比較にならないほど、重要な政策転換のシグナルなのに、生産政策に埋没してきたマスコミにはその価値が見えない。具体的なカネになる「環境支払」が提案されると注目するのに、それが生まれる過程には無頓着なのだろう。大切なのは、百姓や消費者が政策の形成に直接かかわることなのである。それがスタートしようとしているのに、である。
2、農水省が始めたのか
農政は農林水産省から始まると思いこんでいる人が多いようだ。農水省が変わらないと、農政は変わらないと錯覚している。しかし、農政も時代の申し子なのだ。農林省が変わるのは、百姓や地域の変化を読んだからである。やっと日本でもやれると、時機が熟してきたと読んだからである。(1)それほどに、先駆事例が増えてきた。(2)それほどに、「もう農政なんていらないよ」という批判が満ちてきた。(3)それほどに、身のまわりの自然環境の危機が見えてきた、からである。
滋賀県では、農産物の認証からさらに一歩進めて、環境技術を認証し始めた。平成16年から、日本で初めての本格的な環境支払いが始まる。(このことはとても重要なので、次号で紹介する)いずれにしても、私たちが目指す方向に農政と世論の流れは向かっている。これからの変化は、ドラスティックに進むだろう。こうした動きに、百姓は敏感でなければ、状況を後追いするばかりの農業経営や農業技術に終始してしまうことになる。
「農水省が変わったから、オレたちも」という構図は情けないが、それでもまだましな方だ。農水省が変わったのは、オレたちの影響かもしれない、と思えばいいからだ。タチが悪いのは、「どうせ格好ばかりだろう」と高をくくることだ。間違いなく農水省は本気だ。(もちろん省内にも反対勢力はいるが)
3、農水省の決意
まずこの「方針」で、百姓へのメッセージとして一番に読みとるべきは「農水省が支援する農業は、環境保全を重視するものへ移行します」「対象事業、制度資金は、平成20年度までに、環境を重視するものに全部移行(工程表)」というところである。ここまで言いきった、ということだ。そのために、「国民との意見交換に努め、開かれた形で環境施策を策定します」その手段として「環境政策提案会」を開催し、「環境政策アドバイザリー会議」を設置するというのである。ここに当研究所がかかわれるかどうかに注目してほしい。
ところで、日本の農業を「環境保全的」にするための具体的な手法として、「施肥基準」「防除基準」「土づくり指針」などの「指導指針」を全面的に策定し直すと明記されている。もちろんその範囲は、普及センター、農協単位に策定することになるだろうが、小手先だけの見直しでは済まされない。問題は、果たしてこの基準や指針が効果を発揮するかどうかだろう。いくら「施肥防除について定期的に総点検し、営農指導を徹底」したとしても、うまくいくだろうか。
そのためには、三つの手段が新しく採用されなければならない。まず、見直しに、「新しい尺度」を反映させることができるかどうかが、この環境政策の成否を決めるだろう。
(1)「基準・指針」に新たに「環境技術指針」を追加しなければならない。畦草刈りや水路の管理、代かきのしかたや落水の時期など、従来の施肥基準、防除基準では扱わない分野の技術の「基準・指針」が必要になる。そのためにも「環境技術」の概要を急いで明らかにせねばならない。
(2)これらのきじゅん・指針に「環境指標」が組み込まれなければならない。たとえば「水質指標」「土壌指標」と並んで「生物指標」が本格的に誕生せねばならない。この指標を、農業試験場や大学などがつくろうとしなかったは、ただ作る能力がなかっただけの話だ。地域の田んぼや畑をくまなく見つめてきた市町村や普及センターや農協が、百姓参加で作成すればいい。
なぜ「生物指標」(自然指標と言いかえてもいい。生物で自然を代表させていると考えてほしい)にこだわるかというと、これが「国民のライフスタイルの転換」につながっていくからだ。なぜなら、自然環境に包まれた農本的な生産とくらしにこそ、ライフスタイルのモデルとなるからだ。それを百姓が示すための「基準」を生みだしたいのだ
(2)さらに「環境支払」を、この基準にドッキングさせるべきだと考える。そうしないと、百姓は本気で「環境保全」に取り込もうという気にはなれない。どういう「環境支払」を創設し、どういう「基準」でそれを行うか、それを考えるのが、楽しいことではないだろうか。そこに百姓や消費者や地方の行政者もかかわらないといけない。この「環境支払」との連結が、基準・指針の新たな策定のカギを握っている。
※農政と農学の最大の課題として、もちろん百姓の今後の人生を左右するものとして「生産」の概念の大転換が試みなければならないだろう。カネになる生産だけでなく、カネににならないものも生産だと認知し、位置づける文化を創造しなければならない。
4、時代の何がこうさせたのか
私が、この基本方針で最も注目するのは、「大量生産、消費、廃棄という社会から、持続可能な社会への転換を図っていくことが課題となっています」という基本認識がうたわれていることだ。これがもう国民の多数派になってきたということだろう。では、どうしたらいいのか。農水省はこう答えている。「都市と農村の共生、自然と人間の共生を通じての国民全体のライフスタイルの転換に寄与します。これが今後の我が国経済社会の発展基盤を形成していくと考えます」久しぶりに、農が主導権を取るというのだ。カネにならない農的な世界に、近代化を超えていく可能性を見ようというのである。
これは、ひょっとすると「新しい農本主義」だ。国民が憧れているライフスタイルとは何だろうか。高所得で、便利で、快適で、贅沢な浪費、大量の廃棄を生み出す生活ではないことは確実だ。それを「農的なくらし」に求める国民が増え続けているのに、現実の村の暮らしは都会をまだ追いかけていないだろうか。現実の村の自然環境は破壊の歯車が回っていないだろうか。そう、問い直す動きが私たちの周りでもいっぱい出てきたではないか。そこに、「農」と「国」の可能性を見いだし、そこに賭ける思想と政治が求められているわけだ。その一翼を農水省も担うと決意したわけだ。それは「新しい農本主義」と呼んでもいい決意である。農が国民をリードするんだという、久々に聞く決意である。(新しい農本主義については、宇根の本が近いうちに出版さる。お楽しみに)
私は、ここに百姓や「農業関係機関」の新しい役割を発見する。しかし、よく考えてほしい。それは今までもやってきたことなのだ。ただ、正当に位置されたのである。国民の見方が変わったのである。そのことに百姓や関係機関は気づかなければならない。
じつは「環境政策」のねらいはここにある。自然環境を守るのが目的ではなく、自然と人間の関係を、現代的に再構築することにある。そのベースを農業生産と農的なくらしに置こうと言うのである。それがとりもなおさず、持続発展可能な社会づくりになる、と言うのである。しかし、この道づくりは安易なものではない。だが、農水省の決意は読みとった。しかし、政治は戦前の「農本主義政策」に懲りて、農家のくらしに関与してこなかった。(近代化を推進する“生活改善”はあったが)農業生産と農的なくらしを、本格的にカネにならないもの(非経済=外部経済)を尺度にして評価し直す作業を始めるのである。
5、転換のバロメーター
当然のことながら、この方針は「豊かな自然環境の保全・形成のための施策展開」のための基本方針だ。ところが、日本の農業と農政の最大の「闇」は、その自然環境の実態と、百姓仕事との関係がまだよく認識されていないことである。だからこそ、農と自然の研究所が設立されたのだが、方針では「水田周辺地域の生態系の現状を把握する[田んぼの生きもの調査]を実施します」と宣言している。この認識を高く評価する。間違いなく、この調査を誰がやるかが、今後の「環境政策」を行方を占う上で最も重要になる。私は百姓がやるしかないと考える。同時に、それを支援する公的な機関の存在が不可欠になる。なぜなら、(1)自然環境を守る主体が登場し、環境の実態を自覚しなければ、この後の環境政策の展開の主体がまた「関係機関」になってしまうからだ。(2)百姓だって、簡単にはゲンゴロウとガ虫の区別はできない。作物の栽培を勉強し、研究したように、百姓も自然環境の調査・把握法を学習しなければならない。そしてそれを百姓の独学に頼るのではなく、支援・教育する体制を組み立てないといけない。(蛇足だが、それを普及センターや農協がやらないなら、土地改良区や共済組合や○○○がやってもいいのである。どこもまだ素人だから)(3)全国くまなく、自然環境の衰えを(豊かさをと言いたいのだが)つかむには、そこに住む百姓がやるしかない。その情報は「生物指標」としていかされ、その調査技術は農業技術に格上げされていくだろう。(4)この調査の本当の目的は、自然環境を再生してことである。そうであれば、自然の生きものがどういう百姓仕事によって支えられてきたかを突きとめなければならない。そして新しい「環境技術」(ほんとうは古いものの中にあるのだが、気づいたときには新しく光を放つ)形成の主体は百姓以外には存在しえないからである。
そう言う意味で、この調査がどう進むかが、日本の環境政策の成否を占うバロメーターになる。
6、環境デ・カップリングはより高度か
ところで今まで紹介した新しい活動(施策)を支える「環境支払い」はどうなっているのだ、と気になるところだが、この方針の中には一言も出てこない。そこで、農水省に問い合わせたところ、次の項目がそれだという。この方針の最後に「今後検討すべき事項」が5つあげてある。そのA「より高いレベルの環境保全を可能とする農業の実現に向けた施策の検討:諸外国における動向、国際規律の動向を踏まえつつ、より高いレベルの環境保全を可能とする農業の実現に向けて、効果的な施策のあり方について検討します」これが「環境支払い」のことである。その検討は「食料・農業・農村基本法」で規定されている「基本計画」の改訂の議論が今年行われるので、その中で検討するそうだ。
あるいは、その@「農地・農業用水等地域資源に対する施策の検討」で取り上げている「農村における農地・農業用水等の地域資源は、食料の安定供給のみならず、水循環等多面的機能の発揮に貢献しており、これは、一度崩壊すれば復元に多大な期間と費用を必要とするものです。このため、今後の農業を取り巻く条件が厳しさを増す中で、これら地域資源の保全やその利活用に向けた施策について幅広く検討します。」も環境支払の対象としなければならない。これは「環境技術」の重要な部分を占めるからだ。
ともあれ、やっと「環境支払い」(環境デ・カップリング)の実現に向けて動き出したのである。これからが百姓仕事と自然環境のつながりを見つめ続けてきた農と自然の研究所の会員の出番なのである。
さらに「今後検討すべき事項」には、もう一つ気になることが掲げられている。そのD「環境会計の検討:環境に関する会計情報を積極的に提供するため、農林水産業経営はもとより地域的な環境保全への取組も含めた環境会計について検討します」カネにならない生産への本格的な評価の体系をうち立てないといけない。なぜなら、自然環境への配慮は、(自然循環機能への配慮は)農業経営・農業技術・農村生活・農産物流通・食料消費の、すべての局面で働かないといないだろう。「環境会計」はまず、農業技術の中で、次に農業経営(農家生活)の中で検討されなければならない。そしてそれを「環境保全技術」「環境管理営農計画」を百姓が樹立する根拠としなければならない。そういう計画を立案する営農活動に助成(環境支払)を行うのである。
参考資料
◎『生きものもごはんも田んぼのめぐみ』生きもの28種のイラストとごはんの関係のポスター ★1枚200円
◎『提言 亀井善之農林水産大臣様』日本版環境デ・カップリングの実施を求める
★1冊200円
◎『自然環境を支える百姓仕事を支える政策』ドイツのバーデン・ ヴェルテンベルグ州の環境農業政策(翻訳と解説) ★1冊400円
付記:以上を分割して、『農林経済』『協同組合通信』『技術と普及』誌に発表した。
Authors: Charles Peterson, Gregory Möller, Randall Haws, Xiulin Zhang, Joseph Thompson and Daryl Reece
From: "Ethyl Ester Process Scale-up and Biodegradability of Biodiesel"
FINAL REPORT, No. 303, November 1996
For the United States Department of Agriculture, Cooperative State Research Service, Cooperative Agreement No. 93-COOP-1-8627
Abstract
Conversion of rapeseed oil into ethyl esters for use as Biodiesel fuel involves transesterification of the oil triglycerides to mono-esters of the component fatty acids. To accomplish this conversion, raw rapeseed oil is treated at room temperature with ethyl alcohol in the presence of potassium hydroxide as a catalyst. During the process, the glycerol which is produced is insoluble in the ester product, and being heavier, settles out carrying most of the dissolved KOH catalyst with it.
Upon initial settling, some of the undesirable, emulsion-forming by-products may remain in the ester layer, causing problems in the washing stage. It was discovered (by tracking the process with a glycerol determination) that most of these products could be removed by simply restirring the glycerol into the ester, adding water and letting the mixture settle out again. After draining off the glycerol/water layer, the product (ethyl ester) can be easily water-washed to remove residual alcohol and potassium.
要約
菜種油からバイオディーゼル燃料として使用するエチルエステルへの転換は、トリグリセリドから有機酸のモノエステルへのエステル交換を伴う。この転換を果たすために、原料の菜種油をエチルアルコールと、触媒としての水酸化カリウムを添加して室温で反応させる。この反応によって生成されたグリセリン(訳注:英語圏ではグリセロールとも言う。以下グリセリンと訳す。)は、エステルには溶けず、その上重いので、溶けたKOH触媒の殆どを伴って分離する。
最初の分離以後、厄介なことだが副生物がエステル層に残るときは、洗浄に際してエマルジョンを形成し問題を引き起こす。これらの副生物の多くはグリセリンをエステルに加えて攪拌し、水を加えて再度分離させるだけで取り除ける事が分かった。(トラッキング)グリセリン/水層を排出した後は、残ったアルコールとカリウムを取り除くために生成物(エチルエステル)の水洗が容易となる。
(訳注:Oil Seed PressとReactorの訳は省略、読みたい人は原文を自分で読んで下さい。)
Material and methods
原料と製法
Processing
Reactants
反応原料
The reactants for the transesterification process are used in the following previously determined proportions in U.S. and metric units:
エステル交換のための反応原料はアメリカでの単位またはメートル法単位で以下の配合比である。
Raw rapeseed oil 100 L 100 Kg 100 Gal
菜種油
Anhydrous Ethanol 27.4 L 23.74 Kg 27.4 Gal
無水エタノール
Potassium Hydroxide 1.30 Kg 1.43 Kg 10.83 lb
水酸化カリウム
The input amount of raw rapeseed oil determines the batch size, and the other components are calculated from the following formulas:
菜種油の投入量はバッチサイズから決め、その他の原料は次の計算式から決められる
EtOH = 0.2738 x RO
KOH = 0.013 x RO
where:
ここで、
EtOH = amount of ethanol required, in liters
必要なエタノールの量、リッター
RO = the desired amount of oil to be processed, in liters
油の量、リッター
KOH = amount of KOH required, in kg
必要な水酸化カリウム、kg
According to these formulas ethanol is added at a 65% stoichiometric excess, or a molar ratio of 5.0: 1 EtOH to oil. The KOH is added at 1.43% of the weight of input oil.
上記の計算式に従ってエタノールは油に対し化学等量より65%、モル比で5対1と多く使用する。
Quality of Reactants
1. Rapeseed Oil. Best when clear (filtered) because excess sediment collects on the bottom of the reaction vessel during glycerol settling and at the liquid interface during washing. This sediment interferes with the separation of liquid phases and with the washout of catalyst, and may tend to promote stable emulsion formation. Slight haziness of the oil probably does no harm. The original oil must be water-free, because every molecule of water destroys a molecule of catalyst, thus decreasing its concentration.
原料の品質
1. 菜種油。透明であるのが最善(ろ過)、何故なら固形物はグリセリンの分離の際には反応槽の底に、洗浄の際は液の境界に集まる。この沈殿物は、液層の分離や触媒の洗浄除去を妨げ、安定なエマルジョン形成の傾向を助長する。オイルが少しぐらい曇っていても障害はないだろう。原料の油は、水分を含んでいてはならない。それは、水分子は触媒の分子を壊し、結果として触媒の濃度を下げることになるからだ。
2. Ethanol. The nearer to absolute (200 proof), the better. Gasoline present in the alcohol as a denaturant appears to do no harm. The reaction proceeds satisfactorily in mixtures of 200-proof ethanol with 10%(v/v) or more gasoline present. However, even small quantities of water (less than 1%) can decrease the extent of the conversion reaction enough to prevent the separation of glycerol from the reaction mixture.
2. エタノール。無水に近いものが良い。アルコールの変性剤としてガソリンが混ぜられているが、これは何も障害は与えない。(訳注:変性剤を入れる事により飲酒出来なくしています。日本ではピリジンなどが加えられています。薬局で買える無水メタノールには変性剤は加えられていません。その分税金が上乗せされ、高いのですが。)この反応は無水アルコールと10%またはそれ以上のガソリンの存在の下でも満足に進む。しかしながら、少しの量の水(1%以下)であっても交換反応を低下させかねず、反応母液からのグリセリン分離を妨げるに十分だ。
3. Potassium Hydroxide Catalyst. Best if it has > 85% KOH. Even the best grades of KOH have 14 to 15% water (which cannot be removed). It should be low in carbonate, because potassium carbonate does not serve as a satisfactory catalyst, and may cause cloudiness in the final ester.
3. 水酸化カリウム触媒。85%以上のKOHであれば良い。特級のKOHでも14‐15%の水を含む(この水は取り除けない)。炭酸塩は少ないほうが良い。炭酸カリウムは満足な触媒として働かず、最終生成物のエステルを濁らせる。
Other catalysts which may be used are potassium ethoxide and sodium ethoxide, but they are prohibitively expensive. Sodium hydroxide was not a suitable catalyst because it was not sufficiently soluble in ethanol and it tends to promote undesirable gel and emulsion formation during transesterification.
他の触媒としてカリウムエトキシドまたはナトリウムエトキシドが使用される事があるが、これらは手が出せないほど高い。水酸化ナトリウムは触媒としては適当でない。それはエタノールに十分溶けず、好ましくないゲルを生じさせる傾向があり、エステル交換の反応中にエマルジョンを形成するからだ。
The Reactions
反応
Using a 100 liter batch of oil as an example, the KOH used reacts with 1.07kg of ethanol to produce 1.95kg of potassium ethoxide. This mixture now contains (27.4x0.789)-1.07 = 20.55kg of free ethanol and 1.07kg of ethanol as potassium ethoxide catalyst. Any water added to the entire system reverses the above reaction and quenches a proportional amount of the potassium ethoxide catalyst. One part of water can quench up to 84.15/18.02 = 4.67 parts of catalyst.
100リッターの油をバッチサイズとして、1.07kgのエタノールと反応する量のKOHを使用し、1.95kgのカリウムエトキシドにして反応させる例を紹介する。さて、この混合液には(27.4x0.789)-1.07 = 20.55kgのカリウムとは反応していないエタノールと、カリウムエトキシドの触媒として1.07kgのエタノールが入っている。もし水が入り込んだなら、先ほど説明した反応が起こり、その水の量に応じた量のカリウムエトキシド触媒が破壊される。水1部は、84.15/18.02 = 4.67部の触媒を壊す。(訳注:これは水の分子量が18と非常に小さいからです。)
The ethanol-KOH mixture is then poured into the rapeseed oil, and the following transesterification reaction occurs: (a hypothetical formula for the rapeseed oil, based on a typical oil analysis is used):
エタノール−KOH混合液は菜種油に加えられ、次のエステル交換反応が起こる:標準的なオイル分析による菜種油の仮想的な式)
Rapeseed Oil Ethanol Ethylester Gricerol
MW 963.51 138.21 1009.02 92.09
(3×46.07) (3×336.54)
C19H35COOCH2 HOCH2
C19H35COOCH + 3(HOC2H5) ―――> 3(C19H35COOC2H5) + HOCH
C19H35COOCH2 HOCH2
From these relationships, 100 liters (91kg) of rapeseed oil reacts with 13.1kg of ethanol. The 21.62kg (or27.4L) of ethanol used in the batch represents 21.62/13.1x100 = 165% of that required for complete transesterification of 100 liters of rapeseed oil. (A 65% excess over the theoretical requirement).
この関係式から、100リッター(91kg)の菜種油が13.1kgのエタノールと反応する。21.62kg(27.4L)のエタノールがこのバッチに使われるので100Lの菜種油を完全にエステル交換するのに必要な量の21.62/13.1x100 = 165%のエタノールが入っていることになる。
The Mechanics of the Transesterification Process
エステル交換工程の作業法
1. Raw rapeseed oil is measured into the reactor.
1. 原料である菜種油を量り取り反応槽に入れる。
2. The required amount of ethanol is placed into a smaller covered container.
2. 必要な量のエタノールを蓋付きの小さなコンテナー(訳注:反応容器の事)に入れる。
3. The required amount of potassium hydroxide is quickly weighed, protecting it as much as possible from atmospheric moisture and carbon dioxide.
3. 必要とされる量の水酸化カリウムを素早く量り取る。これは、水酸化カリウムを空気中の水分と二酸化炭素から守るために必要なことだ。(訳注:水酸化カリウム容器の蓋もきっちり閉める事を忘れずに!)
4. The solid potassium hydroxide is added to all of the ethanol, which is then vigorously stirred in the covered container until completely dissolved. At this point the dissolved KOH is presumed to have been converted to potassium ethoxide catalyst. Any undissolved pellets of KOH left in this alcohol tend to remain undissolved during the entire subsequent transesterification, essentially decreasing the amount of catalyst taking part in the reaction.
4. 固形の水酸化カリウムを全てエタノールに加えた後、蓋をした反応容器の中で完全に溶けるまで勢い良く攪拌する。この時点で、溶けたKOHはカリウムエトキシドになったと推定される。KOHの粒をこのアルコール溶液の中に少しでも溶かさずに残すと、引き続くエステル交換反応の間も溶けずに残る傾向があり、この反応の基本的な要素である触媒の量を少なくしてしまう。
5. The ethanol-catalyst mixture is poured into the oil in the main reactor and stirred rapidly. Mixing is continued for 6 hours at room temperature. The reaction mixture usually changes to a turbid orange-brown color within the first few minutes; then it changes to a clear transparent brown color; finally, as the reaction is completed, the mixture again becomes somewhat turbid and orange-brown colored due to the emulsified free glycerol which has been formed.
5. エタノール−触媒溶液を主反応容器内の油に加え、すぐに攪拌を始める。攪拌は室温で6時間継続する。最初の数分で反応液は徐々に濁ったオレンジ色−茶色に変わってくる。やがて、透明な濁りの無い茶色に変わり、最後には反応が終了した目印として、(トリグリセリドから解き放たれた)生成グリセリンが分散するために、溶液はもう一度幾らか濁ったようなオレンジ−茶色になる。
6. In a good completed reaction, the glycerol begins to separate immediately upon cessation of stirring, and the settling mostly complete in one hour. After initial settling, the entire contents of the reaction vessel are again mixed together and stirred vigorously for 40 minutes. After the first 20 minutes of restirring, water is added at 15% of the initial volume of oil used in the reaction. Stirring should continue an additional 20 minutes after the water is added for a total of 40 minutes of restirring. This mixture is then allowed to settle overnight or over a weekend. A longer separation time facilitates the washing process. Remixing the glycerol layer with the ester layer while adding water has the effect of collecting and removing impurities and products of incomplete reaction from the ester. The washing phase can then proceed at a more rapid pace than if the remixing stage were left out.
6. 反応が良く進むと、グリセリンは攪拌停止後すぐ分離(訳注:液層分離のこと)を始めるが、十分に分離させるため1時間静置する。最初の分離の後、反応容器内の内容物を全部もう一度一緒に40分間強く攪拌する。再攪拌を20分間行った後、この反応に使用した油の体積の15%の水を加える。攪拌は、水を追加した後更に20分間続けなければならない。都合、40分間の再攪拌をすることになる。それが済んだらこの溶液は層分離のため一晩静置するか、週末の間放置しておく(訳注:大学なので学生が研究室に戻って来るのは月曜日になるからだろう。我々百姓にはあまり意味のない話だ。)。分離時間が長ければ洗浄過程が容易になる。水を加えるまでのグリセリン層とエステル層の再混合は、エステルから未反応の原料と不純物の除去、或いは(グリセリン層への)集積の効果がある。再攪拌が行われていると、洗浄段階はより早いペースで進めることが出来る。
In batches where poorer quality (moisture-containing) ethanol is used the reaction will not go to completion and requires much longer for the glycerol to separate. If separation does not occur, the addition of a small amount (perhaps 10% of the original volume) of alcoholic KOH with stirring may tip the reaction balance in favor of separation. It is also sometimes possible with the addition of a small amount of water (0.5% of the total volume) after the reaction is supposedly completed, to effect the separation of the glycerol from the ester. If the original ethanol contains as much as 1% water, the reaction may be so incomplete that the glycerol may never separate, and the entire batch must be discarded.
より品質の悪いエタノール(水分含有量の高い)を使って反応を進めた場合、反応は完全には進まないし、グリセリン分離にはもっと時間がかかる。もし分離が起こらない場合、少量の(まあ最初使った体積の10%ぐらいだろうが、)アルコール性KOHを攪拌しながら加えることが反応のバランスには良いし、分離にも好都合だ。また時には反応後少量の水(全量の0.5%ぐらい)を加えることもエステルからグリセリンを分離する効果のためにはお勧め出来る。もし原料のエタノールに1%以上の水が含まれていたら、この反応はグリセリンがもう決して分離できないくらい不充分になるかもしれない。そしてこのバッチは捨てるしかなくなるだろう。(訳注:失敗したら捨てずにKOHを追加して液体石鹸を作ろう!そして、近所に配れば環境にも良いし、ただのてんぷら油を入手できる事になる。)
7. After remixing the glycerol and 15% water addition, and completion of the separation, the lower, heavier glycerol/water layer is drained off, pumped into barrels and shipped to a recycler. A thin layer of gross glycerol and sludge may adhere to the bottom of the reactor. It is advisable to wash down the cone of the reactor to remove this adhering glycerol or sediment by pouring a few gallons of cold water down and around the inside circumference of the reactor. This should be done at least twice. Any sediment probably consists of a host of minor components of the original rapeseed oil (proteins, glycoproteins, waxes, sterols, carotenoids, phosphatides, carbohydrates, etc.). Some of these constituents are emulsifying agents, and others have affinity for water which causes hold-up of undesirable impurities(e.g., potassium) and tend to prolong the washing process.
7. グリセリンの再攪拌と15%の水追加、そして分離完了の後、下層の重いグリセリン/水層は排出され樽に移される。そして、リサイクル派の人々に送られる。反応槽の底にグリセリンとスラッジ状物の混じったものが薄い層となってこびり付くかもしれない。コーン部(訳注:cone bottomのこと。このリアクターは底部が円錐形に絞られている。)のグリセリンまたは沈殿物は数ガロンの冷水で洗い落とし、反応器の内部の曲がった部分も洗い流せばよい。また、この作業は少なくとも2回繰り返す。どんな沈殿物も多分原料の菜種油に含まれていた僅かな成分であろう。(たんぱく質、糖タンパク、ワックス、ステロイド類、カロチン類、リン脂質、炭水化物などだ。)これらの成分の幾つかは乳化剤であるし、他のものは親水性があり望ましくない不純物(カリウムなど)をつかまえてしまう原因となり、洗浄工程を長引かせる傾向がある。
8. Finally, in order to remove the remaining alcohol and trace amounts of potassium, glycerol or soap, the ester is washed with water at about 30% of the ester volume or 30 gallons of water to a 100 gallon batch of ester. The water is stirred into the ester with mechanical stirring and air agitation as described in the next section. After a few hours the stirring/aeration is stopped and the water is allowed to settle out for two to three days. At this point the process is complete and the crystal clear product can be pumped into fuel tanks for storage or immediate use.
8. 最後に、残ったアルコールと痕跡程度の量のカリウム、グリセリンまたは石鹸を取り除くために、エステルは約30%体積量の水または100ガロンのエステルに対し30ガロンの水で洗われる。水は攪拌しながらエステルに入れられ、更に次の章で説明されるようにエアーバブリングで攪拌される。数時間後攪拌/エアレーション(バブリング)を止め、水が分離してくるまで2‐3日放置する。この時点で工程は完結し、クリスタルクリアーな生成物は貯蔵のために燃料タンクに移されるかすぐに使われる。
The Washing Process
Washing the ester product is necessary in order to improve its fuel properties, largely by removing residual free glycerol and small amounts of potassium remaining from the catalyst. The best method so far devised was previously described. It is a combination of: 1. Mixing the glycerol layer into the ester after the initial settling has occurred; adding 15% water; stirring and settling. 2. A water wash with agitation and aeration after the glycerol/water layer has been drained off.
洗浄工程
エステル生成物を洗うことは、残っているグリセリンと触媒から残った少量のカリウムを主に取り除くことによって燃料の性状を向上させるために必要だ。最善の方法は既に述べた。この方法は次の順番に行う;1. 最初の分離が起こったらグリセリン層をエステルに混ぜ合わせ、15%の水を加え攪拌し分離させる。2. グリセリン/水層が排出されたら水を加え攪拌とエアレーションで洗う。
Soap Formation
Soaps, at least in trace amounts, can be formed by an accompanying reaction during or subsequent to the transesterification process:
石鹸の形成
石鹸は、痕跡程度のものだが、エステル交換反応によってまたそれに引き続く操作によって出来る。
RCOOC2H5 + H2O ――> RCOOH + C2H5OH
Ethyl Ester Water Fatty Acid Ethanol
エチルエステル 水 脂肪酸 エタノール
This is an equilibrium reaction, and any base will neutralize the acid formed, removing it, and forcing the reaction to the right. Also the reaction product of the base and acid is an undesired substance (a soap, which is an emulsifying agent).
これは平衡反応であって、どのような塩基も出来た酸を中和し、取り除き、反応を右に進める。酸と塩基の反応生成物も望まない物質である(石鹸は鹸化物だ)。
RCOOH + KOH ――> RCOOK + H2O
Fatty Acid A Base Salt/Soap Water
脂肪酸 塩基 塩/石鹸 水
These reactions have little tendency to occur during the transesterification because of the small amount of water in the system. The source of the interfering water for this reaction may be use of low-grade water-containing ethanol, water in the other reactants at the beginning (from atmospheric exposure), or even from the first stage of the water wash. In any case, only a trace of soap needs be formed to promote emulsification of the ester with the wash water.
この反応は、系内に少量の水があるのでエステル交換反応によって少しは起こる傾向がある。このように(エステル交換)反応を妨害する水は低グレードの水を含むエタノール、最初使用する他の反応原料の水(空気にさらしておいたこと)、または最初の段階での水洗によって持ち込まれる。どんな場合でもエステルを水洗浄する場合には少しの石鹸はエマルジョン形成物として必要だ。(訳注:石鹸の形成は望まない反応ではあるにも関わらず、最終生成物であるエステル、すなわちBDF燃料、とするために副生物は取り除かなければなりませんが、エステルを水で洗うためには水に分散しなければならずそのために石鹸が必要ということを言っています。)
(訳注:以下、この論文は反応リアクターの形状、材質、出来た燃料の粘度、この論文の特徴であるグリセリン再攪拌およびエアーレーション、などについて触れられていますが、毎日の仕事がある百姓が訳すには時間が足りません。読みたい人はライブラリー
http://www.journeytoforever.org/biofuel_library/ethyl_esters.html
で原文を読んで下さい。以上で水酸化カリウムとエタノールを使用するBDF燃料を自分で製造する事は可能だと思います。このホームページの管理者に感謝!)
(U型の場合)
項 目 |
時 期 |
方 法 |
備 考 |
種子予措 |
5月上旬 |
塩水選、60℃温湯消毒、水浸漬 |
塩水比重1.16 |
育 苗 |
5月中旬 〜 6月中旬 |
平置常温出芽 30〜35日苗を目標 |
立枯病予防に焼酎・米酢・木酢液 の 混合希釈液散布 |
本田準備 |
1月 2月下旬 5月下旬 6月中旬 |
乾燥鶏糞反当300kg散布 (有機認証規格品) 緑肥作物播種 (一般呼称・菜の花) 緑肥鋤き込み 田植2日前に代掻き |
ブロードキャスター使用。 景観緑肥用カラシナ及びナタネ。 モアーで細断後耕耘 |
田 植 |
6月中旬 |
成苗ポット苗 |
坪33株植え |
水管理 |
田植後〜中干し 7月下旬 8月上旬 〜 10月上旬 |
8〜10cmの深水管理に努める 中干し 以後間断潅水 |
抑草の為 10月中旬落水 |
肥培管理 |
1月 7月中旬 |
乾燥鶏糞反当300kg散布 必要によってはペレット鶏糞・ナタネ粕を施肥 |
本田準備の項参照 原則として施肥しない |
中耕・除草 |
田植直後 6月下旬 〜 9月下旬 |
緑肥の不出来の田に米糠50〜60kg散布 必要により手押し除草器使用 及び手取り |
抑草効果を期待 |
病虫害防除 |
7月下旬 〜 9月下旬 |
虫見板による観察を適宜行う 穂イモチの恐れがある時は、焼酎・米酢・天然塩で対処する |
平成元年より薬剤散布は行っていない 希釈液にして散布 |
鳥虫害対策 |
|
予定なし |
|
収 穫 |
10月下旬〜 11月上旬 |
自脱型コンバイン使用 |
当該稲の収穫後にその他の稲を収穫 |
前作収穫終了( 14年10月 ) 前作名( 水稲 ) 化学合成資材使用中止開始時期( 10年8月〜14年7月 ) 当該稲収穫までの化学合成資材無使用継続期間( 5年2ヶ月〜1年4ヶ月 ) |
雑草対策の基本技術
独立行政法人 農業工学研究所農村環境部 嶺田 拓也
“有機農業”と聞くと雑草との折り合いを目指し、また草を有効に活用しながら多少の発生なら気にしないと思われがちだが、「農業とは草との戦いである」とあるように実際には目の色を変え舌打ちしながら、あの手この手ではびこる雑草に対して日々格闘している方々は多い。そのような現場での経験に長けた諸先輩方を差し置いて、若輩の私が雑草管理技術について報告させていただくのははなはだ僭越だが、具体的な技術を語る前にまず“雑草”はなぜ生えるのか、といったような当たり前のことからをもう一度整理し、雑草との戦いに血が上っている頭をクールダウンし、冷静にもう一度雑草とのつき合い方を考えてもらえるような契機を提供できれば幸いである。また人間同士のつき合いにもそれぞれ個性や思惑が表れるように、草との理想的なつき合い方にも絶対的なマニュアルなどないので、ここでは草とよりよい関係を目指す上での考え方のヒントを提示するにとどめた。
1.“雑草”と呼ばれる植物とは
水田や畑地など耕作地に生える、いわゆる「雑草」は我が国では450種以上とされている(図1)。
耕作者の立場からこれらの雑草は“目的の作物以外のじゃまな草”であり、“作物に害を及ぼす悪い草”として扱われる。そもそも雑草はなぜ耕作地に生えるのだろうか。人間が栽培を目的として開墾・整備してきた耕作地は、それまで成立していた生態系を崩してできた元来不安定な環境である。降水量や温度条件などの環境条件が揃っている場合、いったん壊された植生を回復しようとする働き(生態系の回復能)が起こり、雑草はその先兵となっている。従って、速やかに“雑草が生え揃う”ということは、健全な生態系の機能を示す指標であり、作物にとっても好適な環境条件を具備していることを示している。さらに耕作地では、それまでの環境下とは異なったさまざまな働きかけが栽培に伴う人為的管理として加えられる。例えば水稲作だと定期的な耕起や湛水などが繰り返され、無意識下に植生に対して選択圧をかけることになる。このようにして水田や畑地などそれぞれの耕作環境に、自然植生とは異なる独特の雑草植生が成立してきたのである。すなわち人間が必要な食料を得るために豊饒な土地を開墾すれば必ず雑草も付随し、作物にとって好適な栽培環境を整えようとする行為はまたその環境に適応する雑草を選抜することとなる。このように雑草社会と人間社会とは切っても切れない運命共同体の関係にある。大地で農業を行う以上、砂漠のように作物も獲れないような環境は別として、雑草は必ずついて回ることをまず再確認したい。農業の歴史の中で、このように影法師のような雑草と戦うために様々な方法が提案され、実行されてきた。今では目的や手段によっては草一本も生えていない作物のみの大地を一時的に造ることも決して不可能ではなくなった。しかし、外部環境に働きかけまた依存している“農”の営みとは、何事に対してもトレードオフの関係(一方が増えると他方が減るような関係)にあると認識した方が良いだろう。草一本もない大地の代償として失われる生態系の諸機能や費やされるエネルギー量は、その大地で産み出される収量や経済的な価値と比較して決して小さいものではなく、長期的に見れば非効率なものとされている。また目の前の“耕地雑草”を生やさないようにするには、逆説的だが管理を放棄すれば良い。当初は雑草が生い茂るが、やがて遷移が進み農耕地の管理に適応した雑草は消えていってしまうだろう。そんな状態で目的の作物を栽培しそれなりの収量を得ることは難しいが。雑草と作物との関係を含めて、
大地に働きかけて目的の産物を収穫(収奪)し、経済的な効率も求める
“農業”は、全て八方良し的な局面などなく、何か(コスト、労力、生態系機能など)を犠牲にした上に成り立つ。そのため有機農業の姿勢とは、運命共同体である雑草とも折り合いを付けるために、卓越したバランス感覚を養っていくことだと私は理解するので、そのようなバランス感覚を活かした技術を考えていく手掛かりをいくつか次に示していきたい。
2.雑草の“顔”を知る
人間社会でもそうだが、交渉や駆け引きを行うときにはまず相手をよく知らなければならない。雑草とのつき合いも同様である。
“上農は草を見ずして草を取る”とあるが、それは相手を熟知しているからこそ出来る技だと思う。雑草を知る方法は一にも二にも「観察」しかない。除草剤はあまりにも普遍性と簡便性を求めすぎて、多くの“観察の出来ない”耕作者を産み出してしまったようだ。雑草に関してだけでなく、農業におけるバランス感覚はまず観察から始まる。雑草の観察にはいくつかポイントがある。まず“どのような”雑草が“どこに”“何時から何時まで”生えるのか、である。“どのような雑草”の判断は別に分類学者のような基準で区分する必要はない。各自の感覚を重視し、それぞれの言葉で表現して構わない。しかし、図鑑等で調べるときに、また他と情報交換するときに共通符となるように正式和名くらいは知っていた方が良さそうだ。“どこに”は、よく手入れをしている圃場でも土壌水分環境や光環境など微妙に異なり、そのミクロな環境条件の違いをめぐる競争の結果、最も適応した雑草群落が成立する。従って、一枚の圃場でも雑草の分布は環境質を反映して不均一であり、その雑草の生え方を観察していけば、その環境の違いをも知ることができる。“何時から”も重要で、後述する発生容量を考える上で、また発生の時差による雑草利用の視点にもつながる。また、前述したように発生雑草は圃場の管理履歴を反映するので、特有の管理を続けていけば、それぞれ圃場ごとに異なる“顔”を持つ雑草群落が成立する。それは草種だけではなく、最近絶滅が心配されているメダカは生息地域ごとに遺伝的な系統が異なることが知られるように、同じ種類でも耕作の履歴によって様々な系統に分かれている可能性がある。多くの生物では選択をかけたとき10〜20世代で進化応答が起こるとされる(一部の除草剤に対し抵抗性を持った雑草も既に出現している)。従って、図鑑に載っている雑草の形態や開花期などの記述や、またある地方での観察例が自分の圃場に生える同じ名前の付いた草に当てはまるとは限らない。他の事例はあくまで参考として、まず自分の圃場に生える雑草の特質を掴み、その“顔”をよく知ることが、雑草とのつき合い方を構築する第一歩となるだろう。
3.どこまで許容(我慢)できるか
どの程度の雑草の発生なら許容できるかという許容量はそれぞれのケースで当然異なってくる。雑草の発生が作物に対して被害を及ぼすのなら、その被る害を経済的に最低限に押さえ込むことが目標になるだろう。しかし、直接的に作物の収量に及ぼす影響だけを水稲作で見てみても(図2)、雑草量と水稲収量の関係にはばらつきが見られる。
このようなばらつきは、草種だけでなく発生時期やさまざま環境条件の影響を受けるためと考えられ、雑草許容量を一概に決めることは大変難しい。しかし現場での観察の積み重ねから個々の圃場におけるおおまかな雑草許容限界量を判断することは可能であると思われる。
3.仲良くなれそうな植生に育て管理する
雑草植生は農耕におけるさまざまな働きかけを反映した結果であるならば、その方向性を調節してやることは可能である。目的に応じた管理しやすい植生に持っていくことも一つの方法でなかろうか。草生栽培のように管理されたマルチ植生によって作物が裁植された以外のスペースを被覆してしまえばいいのだ。例えば、水田でレンゲやヘアリーベッチなどのマメ科植物を栽培してそのまま湛水しイネを栽培してやると、冬雑草だけでなく夏雑草もマルチによって抑えることができた。しかし、都合の良い植生を維持していくためには、作物栽培と同様それなりのメンテナンスが必要となる。観察する目を持ってして判断されたたちの悪い“害草”に退場願うための刈り取りや抜き取り操作、また侵入させないよう周囲の畦畔などの管理、農機具の洗浄、種子汚染された牧草・堆肥・飼料の持ち込みなどに気を配って予防に努めることも重要である。特に再生能力の高い繁殖体で増殖する草種の侵入には特に普段から気を付けていなければならない。
4.草にご遠慮願う
害草となる草が蔓延している圃場やメンテナンスに失敗してしまった場合、まずご遠慮願いたい草種をしっかりと絞り込むことことが大事である。発生量や作物との競合力などから判断して、問題となっている順に雑草をランク付けし、防除の対象とする草種を何種か選ぶ。このとき欲張ってあれもこれもと選ばないことだ。目指している収量や効率等から冷静に判断すれば、大きな被害がもたらす草種はいくつもないはずである。ターゲートが決まったら、その草種の発芽や生育の特徴や環境に対する諸反応を把握し、弱点を知る。そしてその抑制方法は、@発芽する環境をつくらない A発芽したものを出芽させない B出芽したものを初期生育段階で抑える C不適切な時期に発生誘導する D生育したものを繁殖させない E新しい繁殖源を侵入させない、ことがポイントとなる。AやBのために除草剤を使用すると非選択的に植生にダメージを与え、却って害草が侵入する余地を産み出してしまうことがある。比較的生存年数が短い栄養繁殖体ではきっちりとした対策をとれば数年でほぼ根絶できるだろう。ただし繁殖源が生産量も多く土壌中の寿命も長い種子である場合や、再生力の高い栄養繁殖体では根絶させることは大変難しいので、減収率が大きくならない程度に毎年の発生量を抑えていくことを目指し、その雑草と長くつきあっていこうという心構えも必要である。
5.雑草植生を活用する
雑草植生は耕地の植生回復の一環を担っているが、その他にも農耕地生態系の中で様々な機能を有していると考えられる。作物に利用される以外の養水分の保持・作物等への再配分に寄与するほか、雑草植生は害虫やそれを食する益虫を含めた多くの動物・細菌などの生息環境を提供している。多様な食物連鎖網が成立する系はそれぞれが拮抗するので安定的だとされ、収量も安定して持続的に得られることが期待される。上述した草生マルチはこれらの機能の活用も当然視野に入れたものである。また雑草植生が有する資源の積極的な活用は、水田における合鴨農法や牛による畦畔管理のように家畜・家禽と組み合わせると非常に効率的である。しかし、その雑草資源の活用において一時的にも激しく収奪することは系を不安定にさせるおそれがあり、注意が必要だろう。雑草の活用といってもあまり欲張らず、長い目で見て還元されればという気持ちでいることが持続的なやり方につながるのかも知れない。
6.技術を創り上げるのはそれぞれの耕作者
結局はどのように雑草と向き合っていくかはそれぞれのケースで異なり、それを決めるのは実際の耕作者しかない。また環境も草種も状況も異なれば、対処方法は全く異なる。雑草に対処するためには、さまざまな技術を組み合わせることや、対処方法の順序を考えていくことも重要である。前述してきたように農業を営む以上、雑草とは持病のように末永くつき合っていかなければならない。窮屈な点はあるものの、そこをいかにうまく工夫して無理のないように対応していくか。これが農業の醍醐味であり、また面白さでもあるだろう。そのときどきの状況で正しい診断と判断が下せるのがバランス感覚の優れた有機農業者なのではないかと思う。
お米の勉強会は、1986年10月8日に始まり、毎月1回例会を開いている。
この会は、お米、農業、食べ物、環境問題について、いろいろな立場の人たちが一緒になって、広い角度から問題の本質を勉強し、検討し、今後も現在以上にいい状態で農業が続けられ、質のいい食べ物が得られるよう、根本的な改革の方向を見いだすために勉強する。
そして会員の意見が一致したことについては改革のための運動もする。
そのために、いろいろな立場の人たちから幅広く意見を聞くことに努め、また意見が違う人たちが同じテーブルについて自由に意見を出し合い、討論できる場として、この会が存在するよう努力する。
会員は、消費者、生産者、流通関係者、マスコミ関係者など現在約350名であり、各方面及び多くの方々の協力も得ている。会費は年4千円とし、不足分は自己負担として運営している。
また、この会の主旨として次のような約束事を決めている。
1.この会はお米、農業、食べ物、環境について広い視野から勉強するのを目的とし、その都度結論を出したり、方向づけたりはしない。
2.どのような意見も自由に言える場でありたい。
3.企画運営は特定の個人によってではなく、会員全員がかかわって勧めるのを理想とする。
これまでの履歴書 お米についての連続勉強会「日本の主食お米のゆくえ―食料自給を考える」
1986〜87年シリーズ「食管法」、「生産者と語ろう」、「お米の輸入問題」
88年シリーズ「明日の食べ物、農業」 89年シリーズ「50億人の食糧の安全を目指して」
90年シリーズ「地球の環境と農業」 91年シリーズ「森と農業と豊かな暮らし」
92年シリーズ「歴史に学ぶ農業、食べ物基礎講座」 93年シリーズ「シンプルな農業と暮らしを求めて」
94年シリーズ「コメ元年、健康な農業の再生を!」 95年シリーズ「農業も生産者責任の時代」
96年シリーズ「森と田畑とこうべの暮らし」(1995〜96年は毎月他団体と震災復興支援活動)
97年シリーズ「森と田畑とこうべの暮らしU」 98年「田畑もまちも生みも山からのー繋がり」
99年シリーズ「暮らしを見直し、化学物質や重金属汚染を減らそう」
2000年シリーズ「わたしのエコリュックサックを軽くしたい」
01年シリーズ「グリーン購入、グリーン生活」
第171回1月14日シリーズ第1回 「「環境保全型e―ビジネス『イー・有機生活』しませんか」―有機農産物の全国提携と消費者の選択の広がりの可能性」農事組合法人米沢郷牧場代表理事 伊藤幸吉氏
第172回2月11日シリーズ第2回「まわりも元気にする百姓ができるといいなー『パスカルさんだ』見学とわいわいシンポジウム」農業生産法人(有)夢工房衣笠愛之氏 農業生産法人(有)みたけの里舎石田成正氏 「農樹」中津隈俊久氏 「ほんまち旬の市」檜田弘子さん 農協市場館「パスカルさんだ」布野隆一氏
第173回3月5日シリーズ第3回「エコマネーは釜ヶ崎のまち再生に役立ちそうか―山下惣一さんと釜ヶ崎を訪れ、豊かさの方法を語り合おう」釜が崎の街再生フォーラムと共催
第174回3月11日シリーズ第4回「原産国、有機認証、減農薬、遺伝子組み換えなど新表示の安全性の中身を問う―環境保全型農産物を高付加価値商品としないために」元神戸大学農学部教授 松中昭一氏 全農林大阪南分会 湯川喜郎氏
第175回4月7日シリーズ第5回「21世紀の消費者の理想像「エシカル・コンシューマー」って何でしょう?―エゴとモノから脱し、未来の子供たちに責任を負うために」グローバル環境文化研究所 岡靖敏氏
第176回4月22日シリーズ第6回「第12回アースデーinあしやーエコマネーを楽しみましょう」に参加
お米の勉強会のテーマは「グリーン購入・グリーン生活」於JR芦屋北側ラポルテ広場
第177回5月20日シリーズ第7回「からだにも地球にもやさしいエコロジークッキング―地域で採れる旬の有機野菜とお米を用いて」いんやん倶楽部竹村亨子さん 於兵庫県立神戸生活創造センター創作工房A
第178回5月26日シリーズ第8回「企業の環境保全活動お支えるのは誰でしょう?―企業のISO14000シリーズ取得の実態と本音」朝日監査法人、ISO審査員魚住隆太氏 「学校給食で日本の食文化の定着を」お米の勉強会小見山卓士氏
第179回7月15日シリーズ第9回「緑の列島フォーラムin大阪−近くの山の木で家をつくる運動ネットワーキング」に参加
第180回7月27日シリーズ第10回「子供たちの人気メニューを作り精米工場と低温貯蔵庫を見学しよう―料理実習とバス見学」
第181回8月3〜5日シリーズ第11回「富山での稲の現地検討会と大豆と麦の加工場見学会と神岡鉱山のCd浄化立入調査参加」
第182回8月11日シリーズ第12回「遺伝子組換え研究はどこまで進んでいるの?」神戸大学遺伝子実験センター大川秀郎先生
第183回10月21日シリーズ第13回「コウノトリの田んぼの生き物調査をしよう」農と自然の研究所宇根豊氏
コウノトリ公園
(資料D)
藤本さん(福井県鯖江市)の育苗(シンポジウム記録集から転載)
<育苗について>
1月10 日ぐらいから約40 日から45 日間種もみを浸種します。それはアブシ
ジン酸という物質を溶かすためです。アブシジン酸は、発芽抑制物質ですから、
それが邪魔になるんです。発芽をしようとすると、アブシジン酸という物質があ
るために発芽率が悪くなるんです。水でアブシジン酸を溶かして、発芽率を良く
するために45日という月日を要するんですが、私は最低でも20日以上は必要と
思ってます。
私が、今ここで申しました事のすべて原点となったのは、一つは岩澤信夫先生
の指導法。それから、光合成細菌の使い方は窟都大学の農学博士の小林達治先生
の所に勉強に行きました。そして、食物のほうは、これも京都大学の先生のほう
へ、食品のほうも溝田久輝先生の所へ勉強に行きまして、その先生方と、もう一
つは東北大の浅野先生の所へ行って、少し木酢の研究をしてきました。そこで大
抵を教わりまして、現在に至っているわけです。
ちょっと脱線しましたけれど、コシヒカリの低温育苗では、浸種期間の温度管
理は5度から7度cの間で、最低でも 20 日以上その状況にしておくんです。そ
うでないと、気温が上がるにしたがって芽が動いてしまうんです。長いことそれ
だけ漬けておかれない。ですから、北側の一切光の当たらない所、温度が低い所
で浸種をします。そして、その水は約5日ぐらで完全に取り替えていただきたい
んです。そうしないと、逆に発芽障害もしくは催芽障害を起こすようになります。
そういうふうにして約40日から45日。そして、播種する10日前になったら、
それを今度は酸素を入れて回していただきたい。そうすることによって、自然催
芽してくるわけです。酸素の回る循環吸水。そうすると、少し鳩胸になってきた
状態で水槽から出し、もみ袋から出して乾操しておくんです。もみを干す場合に
は、北側の風が通る所で干してほしいんです。大体、最低でも5日間かかる。そ
うしますと、上げた種もみは、約1カ月間そのままの状態でおります。私は1日
に千枚を毎日毎日まくので10日ちょっとかかります。そして60町分の苗を作る。
30町分は私の所で使って、あとの30町分は販売をしております。
先程ちょっと言い忘れましたけれど、自分が販売をしようとする苗は、すべて
先程申しましたけれど、80グラムでまいて管理します。それは、そういう播種
量でまかなくてはやはり普通の人が使えない。
そして、私の無農薬・有機栽培は、種子消毒のときには木酢を使うんです。木
酢は30倍から50倍の間で一気に・・・、ちょっと技術的なことになりますけれ
ど、最初、種子消毒をするときは40度にお湯を沸かすんです。そこへ冷たい水
に入れておいて水切りした種もみを入れますと約30度になります。約30度にな
ったものをきちっと2時間、30度で維持していただきたいんです。そうするこ
とによって、種子消毒は完璧になるんです。そうすると、皆さんのネックになっ
ている種子消毒のほうも解決するんであろうと思います。
もう一つは、それをすませたらまた水の中へ入れてもらえばいいことです。そ
れで冷やしてください。そのままの状態にしますと、温度が掛かっていますから
だんだんだんだん伸びてきてしまいます。また冷やして5度から7度cの中で置
いておきます。その種子消毒を行うには、浸種を約1週間から10 日した時に行
つてください。それが種子消毒のポイントです。
あとは、播種のときも木酢液を使います。タチガレンとかダコニールは一切使
いません。木酢だけで結構です。木酢液の500倍液を作りまして、潅水の中に入
れます。水を使ってください。そうすると、リゾープス菌とかそういう問題は発
生致しません。そして、普通の栽培をされる方は別に構いませんけれど、低温育
苗をハウスでする方は、最抵でも半月前にはハウスのビニールを掛けてください。
中の地温を上げるんです。そして種をまいたら、その中で1週間しますと芽がぽ
こぽこ出てくる。10日で完全にそろいます。
低温育苗の長所は、何が長所かといいますと「人手」です。一切田植えまで苗
を見に行かなくてもいい。水を入れましたら1週間や10 日でもきちっとそろい
ます。
一つ忘れ物があります。それは「ホワイトシルバーSS」というやつです。そ
のビニールは裏側はシルバー、反対側は自です。それを温度によって使い分けて
ください。温度が高いときには白いほうを上に、そして温度が低いときにはシル
バーのほうを上にやってください。なぜかといいますと、地域によって温度差が
ありますから3度から5度の温度が確保できます。温度が高いときにはシルバ←
を下にして覆いますと、温度は低くなります。シルバーのほうを上へやっておき
ますと、逆に今度は光や熱を吸収しますから中の育苗箱は温度が高くなります。
それは地域によって異なりますから地域で裏か表かを使い分ける。
もう一つ忘れていました。一番大切なところです。「床土」なんです。発芽器
を使う場合は、どこのどんな土を使ってもけっこうです。低温育苗、自然催芽を
するときには吟味しなければなりません。ちなみに私が使っている床土は、イセ
キの「ラブリー培土」です。イセキさんのラブリー培土。それはなぜかといいま
すと、土を焼いて粒状になっている土だからなんです。粉を掛けていくわけです。
なぜならば、浸透性がいいからです。その浸透性はなぜ必要かといいますと、種
をまいたときに1.5気圧の水が必要なんです。最低でも、1.2気圧必要なんです。1.S
気圧まで上げて潅水をするのが最高です。(潅水の圧力で30万円台の播種機に標
準装備されている)
なぜならば、10日間、「ホワイトシルバー8S」をかぶせたら一切めくりません、
そのままです。中の温度が 50度になろうが一切めくっては駄目です。中の温度
は50度ぐらいあっても、育苗箱は皆さんが発芽器で使っている温度、28度から30
度にきちっと設定されます。何ともございません。ですから失敗をする時は、そ
の中の温度と、保水性と、結局通水性が足りないんです。ですから、きちっとし
た床土を使っていただきたいと思います。
私、イセキさんの土を言いましたけれども、皆さんの所でそういう土があった
らそれでいいんです、その土を使ってください。そうしますとプール育苗ができ
ます。
そしてプール育苗をするときに一番大切なのは水の高さなんです。
これは、できるだけ平らにしていただきたいんです。ヌキ板(約10cm)の枠
内をできるだけ平らにしてください。そして、それが平らにできない部分につい
ては、別に心配しなくてもいいんです。大きなハウスでも簡単に平らにできるん
です。ハウスの真ん中へタル木(4.5cm角材)を入れてください。
そうすると、両端では田んぼだった場合そんなに高低差がございませんから、
へこんだところにもみ殻を入れて均平をとっていきます。(次ペ←ジ図)
そして、苗箱をず−つと並べるんです。ホワイトシルバー85をベタ掛けして10
日間放置しておきますと自然に発芽してきますから、ホワイトシルバー 85をと
つて、苗箱の肩まで水を張ります。苗がだんだん伸びるに従って水を張って最高
でヌキ板の高さまで入ってきます。雨がだんだん降りまして、ヌキ板の上まで水
がたまっても、もう何も管理しなくてもいい。田んぼに植えるようになったら苗
を取りにいけばいい。あとは何も一切行かなくていい。
もう一つ、水田微生物を使うことを言い忘れていました。田んぼには、水田微
生物がたくさんおりますから。大体、5メ←トル四方にスコップで1杯で結構で
す。田んぼの土を投込んでください。そうしますと、田んぼの徹生物がこの中に
入りますから根が活躍するのが早いのです。水田微生物と併用していきますから
大丈夫です。そして、この中で繁殖をしていきまして、45 日ほったらかしてお
いても管理の手間は全く要らないんです。そうすることによって、成苗で植えて
いけます。普通のそういう状況ですと毎日水をやったりしなくては駄目ですから、
ものすごく手間が掛かるんです。こういう方法でやってください。丈夫な苗がで
きます。
(資料C)
お米の勉強会は、1986年10月8日に始まり、毎月1回例会を開いている。
この会は、お米、農業、食べ物、環境問題について、いろいろな立場の人たちが一緒になって、広い角度から問題の本質を勉強し、検討し、今後も現在以上にいい状態で農業が続けられ、質のいい食べ物が得られるよう、根本的な改革の方向を見いだすために勉強する。
そして会員の意見が一致したことについては改革のための運動もする。
そのために、いろいろな立場の人たちから幅広く意見を聞くことに努め、また意見が違う人たちが同じテーブルについて自由に意見を出し合い、討論できる場として、この会が存在するよう努力する。
会員は、消費者、生産者、流通関係者、マスコミ関係者など現在約350名であり、各方面及び多くの方々の協力も得ている。会費は年4千円とし、不足分は自己負担として運営している。
また、この会の主旨として次のような約束事を決めている。
1.この会はお米、農業、食べ物、環境について広い視野から勉強するのを目的とし、その都度結論を出したり、方向づけたりはしない。
2.どのような意見も自由に言える場でありたい。
3.企画運営は特定の個人によってではなく、会員全員がかかわって勧めるのを理想とする。
これまでの履歴書 お米についての連続勉強会「日本の主食お米のゆくえ―食料自給を考える」
1986〜87年シリーズ「食管法」、「生産者と語ろう」、「お米の輸入問題」
88年シリーズ「明日の食べ物、農業」 89年シリーズ「50億人の食糧の安全を目指して」
90年シリーズ「地球の環境と農業」 91年シリーズ「森と農業と豊かな暮らし」
92年シリーズ「歴史に学ぶ農業、食べ物基礎講座」 93年シリーズ「シンプルな農業と暮らしを求めて」
94年シリーズ「コメ元年、健康な農業の再生を!」 95年シリーズ「農業も生産者責任の時代」
96年シリーズ「森と田畑とこうべの暮らし」(1995〜96年は毎月他団体と震災復興支援活動)
97年シリーズ「森と田畑とこうべの暮らしU」 98年「田畑もまちも生みも山からのー繋がり」
99年シリーズ「暮らしを見直し、化学物質や重金属汚染を減らそう」
2000年シリーズ「わたしのエコリュックサックを軽くしたい」
01年シリーズ「グリーン購入、グリーン生活」
第171回1月14日シリーズ第1回 「「環境保全型e―ビジネス『イー・有機生活』しませんか」―有機農産物の全国提携と消費者の選択の広がりの可能性」農事組合法人米沢郷牧場代表理事 伊藤幸吉氏
第172回2月11日シリーズ第2回「まわりも元気にする百姓ができるといいなー『パスカルさんだ』見学とわいわいシンポジウム」農業生産法人(有)夢工房衣笠愛之氏 農業生産法人(有)みたけの里舎石田成正氏 「農樹」中津隈俊久氏 「ほんまち旬の市」檜田弘子さん 農協市場館「パスカルさんだ」布野隆一氏
第173回3月5日シリーズ第3回「エコマネーは釜ヶ崎のまち再生に役立ちそうか―山下惣一さんと釜ヶ崎を訪れ、豊かさの方法を語り合おう」釜が崎の街再生フォーラムと共催
第174回3月11日シリーズ第4回「原産国、有機認証、減農薬、遺伝子組み換えなど新表示の安全性の中身を問う―環境保全型農産物を高付加価値商品としないために」元神戸大学農学部教授 松中昭一氏 全農林大阪南分会 湯川喜郎氏
第175回4月7日シリーズ第5回「21世紀の消費者の理想像「エシカル・コンシューマー」って何でしょう?―エゴとモノから脱し、未来の子供たちに責任を負うために」グローバル環境文化研究所 岡靖敏氏
第176回4月22日シリーズ第6回「第12回アースデーinあしやーエコマネーを楽しみましょう」に参加
お米の勉強会のテーマは「グリーン購入・グリーン生活」於JR芦屋北側ラポルテ広場
第177回5月20日シリーズ第7回「からだにも地球にもやさしいエコロジークッキング―地域で採れる旬の有機野菜とお米を用いて」いんやん倶楽部竹村亨子さん 於兵庫県立神戸生活創造センター創作工房A
第178回5月26日シリーズ第8回「企業の環境保全活動お支えるのは誰でしょう?―企業のISO14000シリーズ取得の実態と本音」朝日監査法人、ISO審査員魚住隆太氏 「学校給食で日本の食文化の定着を」お米の勉強会小見山卓士氏
第179回7月15日シリーズ第9回「緑の列島フォーラムin大阪−近くの山の木で家をつくる運動ネットワーキング」に参加
第180回7月27日シリーズ第10回「子供たちの人気メニューを作り精米工場と低温貯蔵庫を見学しよう―料理実習とバス見学」
第181回8月3〜5日シリーズ第11回「富山での稲の現地検討会と大豆と麦の加工場見学会と神岡鉱山のCd浄化立入調査参加」
第182回8月11日シリーズ第12回「遺伝子組換え研究はどこまで進んでいるの?」神戸大学遺伝子実験センター大川秀郎先生
第183回10月21日シリーズ第13回「コウノトリの田んぼの生き物調査をしよう」農と自然の研究所宇根豊氏
コウノトリ公園
(資料D)
藤本さん(福井県鯖江市)の育苗(シンポジウム記録集から転載)
<育苗について>
1月10 日ぐらいから約40 日から45 日間種もみを浸種します。それはアブシ
ジン酸という物質を溶かすためです。アブシジン酸は、発芽抑制物質ですから、
それが邪魔になるんです。発芽をしようとすると、アブシジン酸という物質があ
るために発芽率が悪くなるんです。水でアブシジン酸を溶かして、発芽率を良く
するために45日という月日を要するんですが、私は最低でも20日以上は必要と
思ってます。
私が、今ここで申しました事のすべて原点となったのは、一つは岩澤信夫先生
の指導法。それから、光合成細菌の使い方は窟都大学の農学博士の小林達治先生
の所に勉強に行きました。そして、食物のほうは、これも京都大学の先生のほう
へ、食品のほうも溝田久輝先生の所へ勉強に行きまして、その先生方と、もう一
つは東北大の浅野先生の所へ行って、少し木酢の研究をしてきました。そこで大
抵を教わりまして、現在に至っているわけです。
ちょっと脱線しましたけれど、コシヒカリの低温育苗では、浸種期間の温度管
理は5度から7度cの間で、最低でも 20 日以上その状況にしておくんです。そ
うでないと、気温が上がるにしたがって芽が動いてしまうんです。長いことそれ
だけ漬けておかれない。ですから、北側の一切光の当たらない所、温度が低い所
で浸種をします。そして、その水は約5日ぐらで完全に取り替えていただきたい
んです。そうしないと、逆に発芽障害もしくは催芽障害を起こすようになります。
そういうふうにして約40日から45日。そして、播種する10日前になったら、
それを今度は酸素を入れて回していただきたい。そうすることによって、自然催
芽してくるわけです。酸素の回る循環吸水。そうすると、少し鳩胸になってきた
状態で水槽から出し、もみ袋から出して乾操しておくんです。もみを干す場合に
は、北側の風が通る所で干してほしいんです。大体、最低でも5日間かかる。そ
うしますと、上げた種もみは、約1カ月間そのままの状態でおります。私は1日
に千枚を毎日毎日まくので10日ちょっとかかります。そして60町分の苗を作る。
30町分は私の所で使って、あとの30町分は販売をしております。
先程ちょっと言い忘れましたけれど、自分が販売をしようとする苗は、すべて
先程申しましたけれど、80グラムでまいて管理します。それは、そういう播種
量でまかなくてはやはり普通の人が使えない。
そして、私の無農薬・有機栽培は、種子消毒のときには木酢を使うんです。木
酢は30倍から50倍の間で一気に・・・、ちょっと技術的なことになりますけれ
ど、最初、種子消毒をするときは40度にお湯を沸かすんです。そこへ冷たい水
に入れておいて水切りした種もみを入れますと約30度になります。約30度にな
ったものをきちっと2時間、30度で維持していただきたいんです。そうするこ
とによって、種子消毒は完璧になるんです。そうすると、皆さんのネックになっ
ている種子消毒のほうも解決するんであろうと思います。
もう一つは、それをすませたらまた水の中へ入れてもらえばいいことです。そ
れで冷やしてください。そのままの状態にしますと、温度が掛かっていますから
だんだんだんだん伸びてきてしまいます。また冷やして5度から7度cの中で置
いておきます。その種子消毒を行うには、浸種を約1週間から10 日した時に行
つてください。それが種子消毒のポイントです。
あとは、播種のときも木酢液を使います。タチガレンとかダコニールは一切使
いません。木酢だけで結構です。木酢液の500倍液を作りまして、潅水の中に入
れます。水を使ってください。そうすると、リゾープス菌とかそういう問題は発
生致しません。そして、普通の栽培をされる方は別に構いませんけれど、低温育
苗をハウスでする方は、最抵でも半月前にはハウスのビニールを掛けてください。
中の地温を上げるんです。そして種をまいたら、その中で1週間しますと芽がぽ
こぽこ出てくる。10日で完全にそろいます。
低温育苗の長所は、何が長所かといいますと「人手」です。一切田植えまで苗
を見に行かなくてもいい。水を入れましたら1週間や10 日でもきちっとそろい
ます。
一つ忘れ物があります。それは「ホワイトシルバーSS」というやつです。そ
のビニールは裏側はシルバー、反対側は自です。それを温度によって使い分けて
ください。温度が高いときには白いほうを上に、そして温度が低いときにはシル
バーのほうを上にやってください。なぜかといいますと、地域によって温度差が
ありますから3度から5度の温度が確保できます。温度が高いときにはシルバ←
を下にして覆いますと、温度は低くなります。シルバーのほうを上へやっておき
ますと、逆に今度は光や熱を吸収しますから中の育苗箱は温度が高くなります。
それは地域によって異なりますから地域で裏か表かを使い分ける。
もう一つ忘れていました。一番大切なところです。「床土」なんです。発芽器
を使う場合は、どこのどんな土を使ってもけっこうです。低温育苗、自然催芽を
するときには吟味しなければなりません。ちなみに私が使っている床土は、イセ
キの「ラブリー培土」です。イセキさんのラブリー培土。それはなぜかといいま
すと、土を焼いて粒状になっている土だからなんです。粉を掛けていくわけです。
なぜならば、浸透性がいいからです。その浸透性はなぜ必要かといいますと、種
をまいたときに1.5気圧の水が必要なんです。最低でも、1.2気圧必要なんです。1.S
気圧まで上げて潅水をするのが最高です。(潅水の圧力で30万円台の播種機に標
準装備されている)
なぜならば、10日間、「ホワイトシルバー8S」をかぶせたら一切めくりません、
そのままです。中の温度が 50度になろうが一切めくっては駄目です。中の温度
は50度ぐらいあっても、育苗箱は皆さんが発芽器で使っている温度、28度から30
度にきちっと設定されます。何ともございません。ですから失敗をする時は、そ
の中の温度と、保水性と、結局通水性が足りないんです。ですから、きちっとし
た床土を使っていただきたいと思います。
私、イセキさんの土を言いましたけれども、皆さんの所でそういう土があった
らそれでいいんです、その土を使ってください。そうしますとプール育苗ができ
ます。
そしてプール育苗をするときに一番大切なのは水の高さなんです。
これは、できるだけ平らにしていただきたいんです。ヌキ板(約10cm)の枠
内をできるだけ平らにしてください。そして、それが平らにできない部分につい
ては、別に心配しなくてもいいんです。大きなハウスでも簡単に平らにできるん
です。ハウスの真ん中へタル木(4.5cm角材)を入れてください。
そうすると、両端では田んぼだった場合そんなに高低差がございませんから、
へこんだところにもみ殻を入れて均平をとっていきます。(次ペ←ジ図)
そして、苗箱をず−つと並べるんです。ホワイトシルバー85をベタ掛けして10
日間放置しておきますと自然に発芽してきますから、ホワイトシルバー 85をと
つて、苗箱の肩まで水を張ります。苗がだんだん伸びるに従って水を張って最高
でヌキ板の高さまで入ってきます。雨がだんだん降りまして、ヌキ板の上まで水
がたまっても、もう何も管理しなくてもいい。田んぼに植えるようになったら苗
を取りにいけばいい。あとは何も一切行かなくていい。
もう一つ、水田微生物を使うことを言い忘れていました。田んぼには、水田微
生物がたくさんおりますから。大体、5メ←トル四方にスコップで1杯で結構で
す。田んぼの土を投込んでください。そうしますと、田んぼの徹生物がこの中に
入りますから根が活躍するのが早いのです。水田微生物と併用していきますから
大丈夫です。そして、この中で繁殖をしていきまして、45 日ほったらかしてお
いても管理の手間は全く要らないんです。そうすることによって、成苗で植えて
いけます。普通のそういう状況ですと毎日水をやったりしなくては駄目ですから、
ものすごく手間が掛かるんです。こういう方法でやってください。丈夫な苗がで
きます。
(資料C)
B ところが、うちの田んぼ(借地)は、固い粘土層で、その道具は通用する自信がなかった.
「ブレーカ」という道具を貸してくれた人がいたが、パイプの打ち込みには、パワーがなかった.
「ユンボを使え」という人が多かったが、お金をかけずに、自分の力でほれないか、やってみたかった.
C結局、ずるい方法に行き着いてしまった.
それは、その田んぼは、農道をはさんで、川があるのだが、その川のコンクリの擁壁に添って、川の中の伏流水めがけてパイプを打ち込むということをやってしまったのだ.
「県の土木が見たら怒られるかも知れないな」という心配があります.
大目に見てくれないかなという、甘い考えもあります.
そのうち、技を磨いて、正規の場所に打ち込みたいものだと思っています.
Dもう1箇所、別な畑(借地)にも、パイプを打ち込みました.
そこは、一級河川「市川」の氾濫した砂が堆積した場所で、昔からの野菜地帯です.
水が出やすい場所です.「ここは、掘れば簡単に水が出るよ」といわれます.
水路からのポンプアップでかん水していたので、特に井戸の必要性はなかったのですが、
ちょうど同じころ、NTTの電柱工事の人が、畑の入り口の電柱を立て替えるためにやってきたのです.
超大型ドリルのような道具で、8メートルは掘れるといいます.
「ついでに井戸用の穴を掘ってもらえないかな?」
OKしてくれたので、パイプ(1インチ半、7000円)をかってきて、まだひまがかかりそうだと、昼飯を食いに帰っている間に、いメートルほど掘って、ここから下は砂利層で水があるからといって、逃げられてしまいました.
「詰が甘いよ、ちゃんとついて見ておかないと」などと笑われましたが、後の祭です.
仕方がないので、こちらも力任せに、大ハンマで4メートルほど打ち込み、水が出るようになりました.
Eめでたしめでたしと言いたい所ですが、いっぱい砂がふき出してきて、きれいな水になったと安心していたところ、
2〜3日たって、水を出そうとしたところ、また、パイプの中に砂が詰まってしまっています.
もう一枚のパイプも同じ症状です.
パイプの掃除、砂を吐き出させて、パイプ先に大きな水溜りを作ることをやり直ししなければなりません.
2〜3日くらい、しつこいくらい、水を出しつづける必要があるそうです.やれやれ
小諸クエン酸健康会
http://www.icon.pref.nagano.jp/usr/kuensan/1.htm
から転載
健康へのキーワード、クエン酸を良く知らない方へ |
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|
(福井県鯖江市の藤本農園で行われた「シンポジウム」記録集。「除草剤を使わない雑草防除法」(民間稲作研究所刊)から、コピーしたものです 2001年2月26日、山下記)
[天祥米]の栽培技術について
西藤秀夫
わが国で神が祀られるようになったのは、弥生時代、稲の栽培が行われるように
なり、、豊作を祈願したことに姑まるといわれています。以来、八百万の神々に五
穀豊穣を祈り続けてきましたが、当時としては、その存在が想像だにできなかった
土壌微生物が神に相当する役割を今日まで果たしてきたと言えます。一
しかしながら、近代の科学万能の思想とともに稲作のシステムもすっかり様変わ
りし、ひたすら、増収のみを信条として、地の神ともいうべき土壌微生物をないが
しろにするかのように、化学肥料主体の栽培体系になりました。その結果、食味の
良くない米がより多く生産されることになって、消費者の米離れに一層の拍車をか
ける一方、病害虫や雑草の発生を恐れて、多量に農薬を散布することが当然のこと
となり、ついにはダイオキシンで大地が汚染され、環境ホルモンによる生物の雌化
現象や生殖機能の低下は残留農薬も関与しているといわれています。
私が提唱する天祥米(サイトー式稲作)は、わが国本来の稲作に立ち返り、高度
の科学的視野で土壌微生物の働きを理解し、その働きによる恩恵を最大限に活用す
ることにより、除草剤及び病害虫のための農薬を使用せず、また有機質肥料のみで
稲を丈夫に育て、手間をかけずに食味の良い米を安定的に収穫するという究極の自
然農法であります。
近年、米の生産過剰に加えて、輸入自由化の国際競争の中で、日本の稲作農家の
活路は、安全でおいしい米の生産が絶対条件であり、それを可能にするのは天祥米
をおいて他にないと言えます。
土壌微生物について
土壌微生物が地球上の有機物を分解する役割は極めて大きいと言えますが、微生
物の種類によって炭素の分解能力や環境の適応に大きな違いがあり、それぞれに得
手不得手があるといえます。もっとも活動力のあるカビ類は高分子のセルロースや
リグニンなどで構成されたワラや木材などを分解することができますが、酵素の存
在が絶対条件なので、水を溜めた水田ではその能力を発揮することができなくなり
ます。これに引き換え、バクテリアは酸素のあるなしにかかわらず、好気的にも嫌
気的にも増殖することができます。ただしバクテリアにも泣き所があって、カビ類
のように炭素構造の複雑なものを分解することができず、低分子のデンプンやグル
コースのみが餌の主体となります。つまり、バクテリアは消化しにくい硬いものは
分解できず、消化しやすい構造の単純な炭素を餌とします。しかし、カビ類と違っ
て還元状態の水田でもよく増殖できます。まさに稲作期間中の有機物分解の主役は
バクテリアであるといえます。
バクテリアは環境条件が整えば80分以内に分裂して増殖するといわれます。6
0分ごとに分裂を繰り返して24時間を経過した時点で1個の細菌は、1,600万以
上になる計算になります。つまり、バクテリアは爆発的に増殖することができ、そ
の増殖は餌のある限り続けられます。この事実が天祥米の栽培に大きな関わりをも
っているといえます。
天祥米とバクテリアの関係について
バクテリアの増殖パタ←ンに次の3つがあります。
1.材料の炭素率(炭素と窒素の割合C/N)が大きい場合
バクテリアの体成分はタンパク質が主体であるので、デンプンの割合が大きい屑
麦などを分解するときは窒素が不足します。そのため、バクテリアは体成分に不足
する窒素を土壌中から無機態アンモニアを取り込むことで補います。すなわち、土
壌中のアンモニアがバクテリアの体内に移行することになり、このアンモニアの移
行はデンプンが分解し尽くされるまで、あるいは土壌に無機態に窒素がなくなるま
で続くことになり、バクテリアが飢餓などで死亡することによって、はじめてアン
モニアとして土に戻されることになります。
以上の成り行きを利用することによって、多量に窒素が残留しているイ草跡や野
菜栽培跡、さらには自給肥料として栽培されたレンゲ田に、屑麦のような炭素率の
大きいデンプン主体の材料を投与し、稲の初期生育の過繁茂を抑制することによっ
て、茎葉の組織を丈夫に育て、病害虫や倒伏に強く食味の良い銘柄米の栽培を可能
とするのです。
2.炭素率が中軽度の有機物の分解
炭素率が20程度の材料が分解される場合、バクテリアが消費するエネルギーと、
体構成に用いる窒素成分のバランスがとれています。したがって、当該有機物が分
解される過程で前項のように土壌中からアンモニアを取り込む必要はなく、また、
分解にしたがって発生するアンモニアを土壌に放出することもないといえます。こ
のような炭素率に近い材料に米糠や麦糠があり、米糠の糖質は40%弱、窒素は2
%強と思われます。
したがって、水田に散布された米糠がバクテリアによって分解されはじめても、
米糠中の窒素成分が直ちに土壌中に放出されることはなく、米糠の分解が進んでバ
クテリアが餌を失い餓死することによって、稲の成分として役立てられることにな
ります。
このことから、田植え直後に多量の米糠を施用する天祥米の栽培は、期せずして
故井原豊氏が提唱された、基肥不要論の「への字型」稲作に通じることになります
3.炭素率の小さい有機物の分解
窒素含有量の多い有機物ほど、相対的に炭素量が少なくなります。この材料が分
解される過捏で、バクテリアに必要な窒素材料は菌体構成の分だけで、それ以外の
窒素は余分なものとしてアンモニア態窒素として土壌中に放出されます。したがっ
て、これらの有機物は分解と平行しながら稲の養分として供給されることになりま
す。このタイプの材料として菜種油粕や大豆粕がありますが、短期間に多量のアン
モニア態窒素が放出されるので、単品で天祥米の栽培に用いることができず、成分
の調整や稲の生育過捏を考慮して配合資材の一部として用います。
上記のように、バクテリアは材料によってさまざまな対応をします。このことか
ら天祥米の栽培では、バクテリアに思う存分活動できる場を与えることによって、
次のような前代未聞の技術開発が行えたのであります。 、
@水田雑草の発生を完全に防止する。
A茎葉が丈夫に育っことにより、
ア、農薬散布の必要がない。
イ、倒伏が避けられる。
B最高食味の米を土質に関係なく生産できる。
C肥料の効率が良く、年々地力が向上する。
D灌漑水を1/2〜1/3に節水することができる。
E管理労力と生産資材の節減ができる。
F環境保全に貢献できる。
以上の項目についての説明は次のとおりです。
水田雑草の発生防止について
田植えが行われた後の水田は地上部が水で覆われて空気の出入りが遮断されるの
で、作土中の酸素は土壌微生物に奪われて還元状態になります。ただし、地表面は
田面水から溶存酸素の供給があるので酸化層となります。すなわち、水田土壌は表
土数ミリメートルの酸化層と還元層である作土の二重構造になっています。
水田雑草には、一年生のものと多年生のもの、また水に溶けている酸素で生育で
きる水生植物と根は水中にあっても生活に必要な酸素は空気中から取り入れなけれ
ばならない湿生植物があります。
一年生のコナギやヒエが発芽するためには、地中に酸素があり光線が必要ですし、
セリやホタルイなどの多年生のものでも生育を開始するためには光が不可欠となり
ます。
したがって、いずれの雑草でも酸素の供給と光線を遮断すれば、発芽や生長が不
可能となります。そのため、地表面の酸化層瘡還元状態にし、田面水を不透明にし
て地表面に太陽光線が到達しなければよいのです。
田植え直後にバクテリアに分解されやすいデンプン質有機物を多量に散布する
と、2〜3日前後で表層の酸化層が完全に還元されることになり、雑草の種子は発
芽の機会を失います。一方、デンプン質の分解に伴い、特有の色素を発色させると
ともに分解された材料がコロイド状になって田面水中を浮遊することで水の濁りが
一層進行し、地表面の見えない状態が1ケ月程度続くことになります。この場合、
深水にするほど不透明さの効果が上がります。なお、天祥米栽培の場合、ヒエにも
つとも効果を発揮します。
天祥米が丈夫に育っ秘密
天祥米の栽培はX字型稲作理論では成立しません。故井原豊氏の「への字型」稲
作こそ、稲を丈夫に育てる栽培体系といえます。井原氏は基肥不要論でしたが、天
祥米の場合田植え直後に一発全量施肥で追肥も穂肥も一切施用しないことを信条と
しています。
このことから、植え付け苗は、成苗で細苗の疎植を理想とします。前述のように、
有機肥料は炭素率の違いによって、早くから多量のアンモニアを放出し分解するも
の、バクテリアが土壌中のアンモニアを拝借しなければ分解されず、肥料としても
効能を発揮するまでに時間のかかるものがあります。
天祥米では、稲の理想的な生育のガイドラインを、元滋賀短大橋川潮教授、稲葉
光国氏の稲作理論を参考にしながら、天祥米の糧(天祥米用の肥料のこと)となる
べき材料の配合を工夫しています。
前述のように、天祥米には追肥や穂肥を施用しないので、肥効に切れ目や変化が
見られません。茎葉の炭素率が大きくなり、硬くて厚い細胞壁で構成される組織が
できるため、イモチやモンガレ病も侵入しがたく、ウンカやヨコパイなども寄りつ
かなくなります。
また、無効分けつが無く、出穂30〜40日前に肥効が最高になるため、大穂で
ありながら第5、第4節間が太くて短く、組織が丈夫であるため、倒伏の危惧は必
要なしといえます。(見学者の感想として、雑草が全く見当たらなかったこと、稲
の茎葉がすすきのように硬かったことが上げられた。)
天祥米は、なぜ食味がよいのか
天祥米の糧(天祥米生産資材)は基肥として、田植え直後に一発施用でありなが
ら、肥効曲線が理想的な「への字型」になります。すなわち、出穂40〜25日前
の第5節の肥大期から一次枝こうの分化期に肥効のピ←クがあることで、大穂であ
りながら倒伏しない保証がとれ、その後は有機質肥料の特性から漸減的に肥効が低
下するので茎葉の無駄なエネルギー消耗が少なくなり、その分登熟歩合の向上に役
立ちます。(別添資料参照。)また、当然のこととして、タンパク質の含量が少な
くなるので、米の食味が良くなります。(資料参照)
一般的に、砂地の米は収量が少ないが、食味はよく、粘質地では収量が多いけれ
ど米はまずいといわれます。これは砂地は粘土が少ないため、アンモニアが稲の生
育初期に多く吸収され、早く肥料切れになり、玄米中のタンパク質が少なくなり、
反対に粘質地は粘土が多いため、アンモニアが多く吸着され、肥料保持がよく、肥
切れしないのでタンパク質を多く含むことになるからです。
ところが、天祥米の場合には、上記の公式が当てはまらないのであります。それ
は、田植え後の初期生育期には、散布された有機質肥料が分解されて放出されるア
ンモニアはごく僅かで、しかも地表面にあり、地中の粘土に吸着されたり流亡する
余地がないといえます。本格的にアンモニアが放出される頃には、稲の根は全面に
張っているので、地下に浸透していくアンモニアをことごとく吸収することになり
ます。粘質地の粘土がアンモニアの吸着を待ちかまえていても、そこまで届かない
ことになります。
すなわち、有機物の分解によって放出されるアンモニアは、土質に関係なく、稲
に吸収されることになります。より増産をしながら、良質米を望めなかった粘質地
で、食味の良い米の生産が、完全無農薬有機栽培によって可能になります。
一般的に、有機質肥料で栽培すれば必ず食味がよいと思う人がありますが、それ
は誤りで、追肥の量が多かったり穂肥を遅れて施用すれば、登熟が悪く、タンパク
質含量も増えて食味を悪くします。基肥に有機質肥料が使用される場合、かなり早
い時期に施されることが多いと思われますが、気温の低い時期であっても分解が進
み(好気性菌、カビ類の関与)、アンモニアが硝酸に変わって脱窒することになり
ます。(ポット試験済み)
天祥米には、放出されたアンモニアが硝酸態に変化するチャンスがなく、バクテ
リアによって生産されたアンモニアは、最も効率よく利用されるといえます。
灌漑の節水について
稲の植え付け後、散布された有機物の分解が進むにつれて、減水量の低下が目立
つようになります。これは、分解された有機物がコロイド状となって土壌粒子間に
目詰まりを起こし、地表面が皮膜で覆われるからだと思われます。
土の種類によっても異なると思いますが、ポット試験では、対照区に比べて減水
量が35%以下になりました。滋賀県の湖辺のある農家で、田植え後に入水してか
ら落水まで水を入れなかった例があります。5〜6月の旬別の降水量は50〜60
ミリ(6月下旬は100ミリ)で特別多くありませんが、減水効果のおかげといえ
ます。
省力とコストの節減について −
天祥米の栽培では、原則として施肥作業が1度であり、しかもポット苗田植機の
場合、田植え作業と同時散布ができるので極めて省労力であり、加えて除草剤その
他の農薬散布の必要がないので、田植えから刈り取りまでの作業は畦草刈りと水管
理だけとなり、除草剤、防除剤などの経費がいらなくなります。
天祥米の栽培(特開平10−52209)について
天祥米の栽培は極めて簡単な方法ですが、それだけに要所要所は完璧でなければ
なりません。中途半端では悲惨な結果に終わります。
天祥米の栽培を希望される場合は早めにご連絡ください。(材料を加工する契約
が必要なので。)ちなみに天祥米の糧の経費10 a分は2万円程度(送料別)で、
野菜膝やレンゲ田の場合はその6割軽度のコストで提供できます。
〒524−0002 滋賀県守山市小島町1271
西藤秀夫
TEL&FAX 077−582−3490
このホームページを立ち上げるにあたるにあたり、全国の400名の方に発送したアンケートです。各地の実践は、このアンケートに答える形でかかれたものが多いです。このホームぺージで、始めて知った方、あなたの「回答」をメールで送っていただけませんか。メールアドレス yamatyan(アットマ)jeans.ocn.ne.jp
ホームページ「除草剤を使わない稲つくり」開設のお知らせとアンケートのお願い
1月29日、30日に開かれた「環境保全型小資源稲作全国集会」では、お世話になりました。拙い司会を担当させてもらっていたものです。イラストを見て、ああ、こんなのがおったなと思い出していただければ幸いです。
あの集まりでは、皆さんに会えて、すごくたくさんの「元気」をもらったような気がしています。除草剤を使わない稲つくりの面白さ、奥の深さ、稲つくりって、やっぱり人が表れるんだなということを、改めて感じさせられました。そして、まだまだ課題は多いけど、今年も除草剤を使わないでがんばってみようと、いっぱいヒントをもらって帰ってきました。皆さんはいかがでしたか。高い旅費と交通費をかけて参加されたのですが、それに見合ったものを手にしていただけたでしょうか。
さて、僕自身は、百姓になって10年足らず、まだまだ新米ですが、稲作では、殺虫剤、殺菌剤は使わなくても、何とかやっていけそうだなという気がしています。ところが、目の上のたんこぶは、除草剤でした。わずか1haたらずの水田ですが、後で手でとって歩くことを想像すると、ぞっとしてなかなか踏み切れませんでした。 カブトエビが大発生する、田植え後すぐに濁り水になる、土の表面が、わりとトロトロになっている、比較的深水にしやすい、そんな田んぼから、4年前、おそるおそる除草剤を使うのをやめて、去年全部の田んぼが無農薬になりました。その間、成苗2本植研究会の稲葉さんや、会員の皆さん、その他にも、いっぱい相談しまくり、たくさんの知恵をもらいました。 そのとき、こんなにたくさんの方々が、除草剤を使わない稲つくりの実践を始められているのかと、地殻変動のようなものを感じました。まだまだ荒削りかもしれないが、その各地の実践を持ち寄り、すり合わせ、磨きをかけていくことができれば、すごい技術が生まれそうだなあ、と思いました。それほど、皆さん方の技術は、示唆に富むものでした。地域地域により、また田んぼ一枚一枚により条件が違いますので、マニュアル化というのも変ですが、体系化できれば、自分のこの田んぼでは、この方式(メニュー)でいこう、そういうことが可能になってくるんじゃないか。1980年代の減農薬運動のときの、うねりに似たものが感じられたのです。あの時、日本の百姓は、その気になれば、殺虫剤、殺菌剤は使わなくても、稲つくりは大丈夫だという技術水準を獲得しました。
さてさて、そこでインターネットです。うちのばあさんいわく「その何とやらのホームページというのは、パソコンでやる寄り合いみたいなものやな」。そうなんです。各地の実践を「持ち寄り」「すり合わせ」「磨きをかけていく」のに、インターネットのホームページがもってこいなのです。どんなに場所が離れていても、稲つくりと同時進行形で「うだうだ」(当地の方言?で、ああでもないこうでもない)とやれるのです。
2年前に思いついたのですが、我が家にはパソコンがありません。いまさら、この年で、パソコンの50の手習いも大儀だなあ、という気持ちでした。誰かやってくれる人いないかなと、指をくわえて待っていました。娘のまり子(小3)が、学校でパソコン教室、「とうちゃん、パソコンて面白いなあ」、それで、決断がつき、パソコンを買ってしまいました。さいわい、昔農文協で営業の仕事していたとき、コンピューター室に閉じ込められ、プログラムを組んでいたことがあります。昔とったなんとやらで、自分でインターネットのホームページを開き、その世話人になることにしました。
前置きが長くなりましたが、ホームページ『除草剤を使わない稲つくり〜おらが田んぼでもできそうか』を、立ち上げるにあたり、皆さんに同封のアンケートをお願いしたいのです。パソコンのない人の情報は、世話人が集めて、できるだけ入力します。(そういう意味では、世話人が一番勉強になります。) どんなやりとりがされているか知りたい方は、子供や孫に頼んでプリントしてもらうか、世話人に声をかけてもらえれば、実費(コピー代+郵送料)でお送りします。手紙による質問なども、世話人がパソコンに入力し、皆さんに検討してもらいます。
故井原豊さんが言っておられました「農業ちゅうのは、ワシら一人一人が先生なんですな」と。ホームページ「除草剤を使わない稲つくり」にかかわる皆さん方一人一人が、それぞれ先生でもあり、生徒でもある、そんな場所(関係)が出来上がるといいなと考えています。
ホームページの構成は、@山ちゃんの世話人日記、A各地の現場からの実践報告、B資料室、Cうだうだ話のコーナーの予定です。Bの「資料室」には、研究者などの協力を得ながら、できるだけ参考になりそうな資料を集めたい思っています。図書室の入り口みたいな役目かな。Cでは、うだうだと、ああでもないこうでもないと、にぎやかにやりましょう。同封の「こんな工夫はいかがですか」も、そのひとつです。
アンケートは、質問形式にこだわらず、できるだけ自由にお書きください。ワープロ、パソコンなどで、別用紙に書いてくださるのも、歓迎です。ご参考までに、僕の「回答」を、「見本」として同封しました。
どうぞよろしくお願いします。
〒672−8002
兵庫県姫路市北原328−4
山下正範
TEL。FAX (0792)45−0576
Eめーる yamatyan(アットマ)jeans.ocn.ne.jp
アンケート
このアンケートは、除草剤を使わない稲つくりにとり組んでいる農家に聞く形式をとっています。まだこれからと思っている方や、団体職員、消費者の方などは、質問形式にこだわらず、自由にお書きください。質問項目を設けたのは、そのほうが書いてもらいやすいかなと思ったからで、どんなふうにやっているのか、どんなふうにやろうとしているのかを、教えていただければありがたいです。ワープロやパソコンで、別の用紙に書いてもらうのも歓迎です。
□お名前
□住所1(都道府県名)
□住所2(市町村以下)
□勤務先など
□TEL FAX
□Eメール
□ホームページURL リンク (可,不可)
(上記の住所、氏名などで表に出てほしくない場合は、その項目の前の□の中に×を書いてください)
@ 経営内容(仕事の内容など)教えてください。
A 除草剤を使わずに稲を作っている田んぼはありますか。あれば、その面積を教えてください。
B いつ頃から取り組み始めましたか。また、その動機(きっかけ、思い)などを教えてください
C どんなやりかたをしていますか。
D あなたの工夫しているところは、どんなところですか。
E また、あなたが苦労していること、相談したいことなどがあれば教えてください。
F やりたいこと、訴えたいこと、聞いてほしいことなど、どんなことでも結構です。メッセージをどうぞ
ありがとうございました。おそれいりますが、下記宛に、郵便、FAX、Eメールで送ってください。このアンケートは、ホームページに掲載させていただきます。
(あて先) 〒672−8002 兵庫県姫路市北原328−4 山下正範 TEL,FAX 0792−45−0576
Eメール yamatyan(アットマ)jeans.ocn.ne.jp
パソコンを持っていない方には、希望者に、実費(コピー代+郵送料)で送らせていただきます。下記のどちらかに○をつけてください。
( 郵送を希望する 希望しない )
僕(山下正範)なら、こんなふうです、と、回答例として、同封しました。
@ 経営内容(仕事の内容など)
水稲 1ha、露地野菜30a。全部、直売。米は、宅急便と、知人の喫茶店においてもらっています。野菜は、一部宅急便に入れるほか、家の隣の県道沿いの無人販売所で売っています。 水張り減反,32a
A 除草剤を使わずに稲を作っている田んぼはありますか。あれば、その面積を教えてください。
70a(全面積)、今年から一枚、稲を作付ける田んぼ(24アール)が増えます。その田んぼは、転作田で、ほとんど荒れていて、草ボーボーだったので、ちょっと心配です。
B いつ頃から取り組み始めましたか。
5年前から。 僕は、田んぼの除草剤は、残念ながら、なくすことのできないものだし、また、這いつくばってまで稲つくりをするものじゃない、そんなふうにずうっと思っていました。ただ、一発除草剤(3キロ粒材)を、反当り1キロほど振っていれば、拾い草程度でやれるなあという感じでやっていました。
ところが、僕の田んぼに、カブトエビがどんどん増えてきたのです。田植えして一週間もすると、水が濁り始めて、田んぼの表面がトロトロになってくるのです。稲葉先生が、深水にすればヒエは大丈夫と確信もって言われるものだし、カブトエビと濁り水効果と、深水の3点セットにすれば、何とかなってくれそうだな、まあ、あかんでもともとや、ひとまちやったら、拾っていってもしれとるやろと、5年前、比較的水持ちのいい田んぼに、除草剤をふらなっかたのです。
横着なものですから、いっぺんも田んぼに入りません。あぜから見ていますときれいなものです。ところが、コンバインに乗って田んぼに入りますと、小さな遅れビエがびっしり。あちゃあという感じでした。その翌年は、さあカブトエビ君、がんばってよなと期待したのですが、ヒエのこぼれ種がわんさと発芽、まわりの百姓に、「自然農法やっとるな」と、からかわれてしまいました。
その年の年賀状に、こんなこと書いています。「わが農園の今年の課題は、雑草対策です。去年のように、はいつくばって草をとるのはごめんだが、このままおめおめと引き下がれるかといったところです。乞う、ご期待」
そんな、なんとも心もとないところから出発したのですが、たくさんの方々から、アドバイスもらいながら、今にいたっていて、まだ、成功しているとはいえませんが、だんだん何とかなりそうな気がし始めています。
C 除草剤を使わない稲つくりをはじめた動機(きっかけ、思い)などを教えてください。
全部直販しているので、お客さんに「無農薬です」と、胸を張って言えるようになりたかったのかな。 つれあいに「草なら、私が取ってまわるから、除草剤何とかならないの」と、尻をたたかれたのが効いたのかな。
白米10キロ、6000円プラス送料で、買ってもらっています。その値段は、わが農園にとっての採算価格=作りがい価格(土方に出る程度の収入は欲しい)と称して、今後とも変更することはないので、あらかじめご了解下さいと言いつづけてきています。市場米価が下がっていく中で、この値段を、お客さんに納得してもらいながら、維持していくには、除草剤も、できればなくしていきたいというのが、やっぱり原動力になったように思います。
D どんなやりかたをしていますか。
田んぼによって条件が違うこともあり、まちまちです。水のかかりがよく、深水にしやすい田んぼは、カブトエビ、濁り水、トロトロ層、深水の組み合わせで、ある程度まで雑草が抑えられるように思います。
深水にしにくい田んぼが問題なのですが、去年、米ぬかペレットを田植え直後に反当り150キロ散布したのが、かなり効果がありました。米ぬかを水口から流し込む方法より、稲の痛みも少なく、抑草効果も高かったです。初期雑草は、きれいに抑えてくれていました。ペレットが、沈みながら溶けていくのですが、田んぼの表面に膜を張るように広がってくれた、これがよかったんじゃないかと、僕は思っています。
今後は、トロトロ層を、どう作り上げていくかがカギになってくるように思っています。また、田んぼによって、除草機を押さねばならない場合もあるのですが、除草機を押すなら、田植え後一週間ぐらいまでの早い時期に押そうと思っているところです。
ものぐさ人間なので、本当は除草機を押したくないのですが、また、「除草剤を使わない稲つくり」の技術は、除草機を押さなくてもできるんだというところまで、持っていきたいと思っています。そうでないと、ごく一部の、熱心な人の技術で終わってしまうと思うから。
E あなたの工夫しているところは、どんなところですか。
トロトロ層ができ始めているけど、まだ本物じゃない。去年、ドライブハローを購入して、表層浅く、めちゃ丁寧に代かきしたけれど、それでも、代掻き直後に手で触ってみると、土がごろごろ(ざくざく)していた。あれえ、おかしいな、という感じでした。
この間の東京での集まりのとき、熊本の後藤清人さんの話を聞いていて、はっと気が付きました。荒代をかいて、水をため、最低でも一週間ぐらいおいて、十分水を染み込ませ、土をふやかしてから、もう一回代掻きをするようにしないと、トロトロにならないのですね。
以前にも、二回代掻きで効果があったので、再挑戦です。代掻きのやり方にも、かぎがあるように思っています。
F また、あなたが苦労していることがあれば教えてください。
5月28日に水が入り、6月上旬に田植えだと、コシヒカリの場合、8月10日ごろ出穂します。出穂45日前まで3週間ほどしかありません。なんとせわしないことよ。2回代掻きすると、いよいよのこと、あわただしい。
中生の品種で、いいのがあればなあと待ち望んでいます。コシヒカリ信仰から抜け出して、今年はヒノヒカリを、一枚(24アール)作ってみようと思っています。
G やりたいこと、訴えたいこと、相談したいことなど、メッセージをどうぞ
除草剤を使わなくなって、田んぼの生き物の相が変わってきました。カブトエビ、豊年えび、貝えび、ミジンコや、そのほか、名前もわからないのが、いっぱいうじょうじょいます。また、浮き草、アオミドロ、サヤミドロなど草生も豊かになってきています。浮き草は、今まで邪魔者扱いされてきたようなところがありますが、マルチの役目をして雑草を抑制してくれるばかりか、西南暖地では、夏場の地温上昇を抑えてくれるし、また、田んぼの水を落とした時、、大きなひび割れができません。保湿効果をもっているので、稲の根をいたわりながら、じっくりと田んぼの土が乾いていってくれるみたいです。その田んぼを取り巻く環境の変わりようは、びっくりすることでもあり、とてもうれしいことでした。
田んぼの除草剤を無くすにはどうしたらいいか、というのは、技術の問題です。おそらく、ほかの百姓の大部分の人がそうであるように、僕も、技術の話を「うだうだ」やるのが大好きです。困ったことに、僕は環境問題を正面から考え始めると、頭が痛くなってきます。どこから手をつけていいのやら、途方にくれてしまうようなところがあります。ところが、除草剤を使わない稲つくりを始めたとき、動機は、そこそこいい値で自分のお米を売りたいなということで始めたのに、そんなに肩肘張らずに、自分の田んぼや、田んぼを取り巻く環境を考え始めている自分がいるのに気が付きました。「あ、こういうのっていいな」と思いました。今度の、除草剤を使わない稲つくりの「技術運動」は、とても奥の深いものがあるような気がしています。
「ホームページを始めたって、見てくれる人いるかな」と不安でした。でも、友人が、「稲つくりは、お世辞にも上手とはいえないけれど、企画力はあるんだから、内容が面白かったら、きっと人は集まってくるよ」と励ましてくれて、決断しました。
「内容」には、皆さんのお力添えが欠かせません。
どうぞ、応援お願いします。
こんな工夫はいかがですか 山下正範
民間稲作研究所の【田んぼの風】に載せてもらおうと思って書いたものですが、こんなことも、ホームページの中で情報交換しあうのもいいなと思い、同封しました。
冬の間は、比較的農作業が暇なもので、ボーっとしながら、春からの水稲や野菜の農作業のことについて、思案することが多いもです。その中から「私のアイデア」、三つほど、紹介しましょう。
@ まずは、酒かすの活用法。
薄上秀雄さんによると、「米ぬかと酵母菌、そして人とはとても相性がいい、、、、、これら(酵母菌)の養分が総合的に働いて葉の緑色を収穫まで保って、稲の老化を押さえ、登熟力を高めてくれる」(現代農業1998年8月号)と言う。また、酒かす施用の田んぼのお米はおいしいとの話も聞く。
ところが、その酒かす、板状になっていて、とても扱いが難しい。ボカシにしようと思っても団子状になっているので、なかなかほぐれてくれない。また、ペレット化するには水分が多すぎる。
そこで、思いついたのが、水に溶かして田んぼに流し込んではどうだろうという案だ。かす汁飲んでいて、ひらめいた。ミカンの網袋に入れて、水道の蛇口において見ると、水圧でもろもろと溶けていってくれた。
※コンバインの網袋の中に入れておいて、水口にドボンとつけて、流し込み施肥すると、うまくいってくれそうな気がする。溶けやすくするため、カクスコなどで、少し細かくして袋に入れるとか、あらかじめ袋ごとバケツの水の中に入れてふやかしておくといい。
※ボカシ肥の材料として使うときは、ぬるま湯でといて、どろどろのかす汁のようにしてから、ほかの材料と混ぜ合わせると、均等に混合しやすいと思うが、どうだろう。
A 次は、ダマ(団子)のない、さらさらしたボカシの作成法。
コツは、材料と水の混合順だけです。米ぬかは水を吸うと団子のようになってしまうので、まず、水を吸っても固まらない性質の骨粉、油粕、蠣殻粉末(有機石灰)、籾殻、クンタンなどを、ジョーレンでざっとまぜあわせます。それに、バケツでドボドボと水をかけ染み込ませながら攪拌します。全体に水が回ってしっとりしたら、その上に米ぬかをふりかけ、ジョーレンできりかえしてやります。
僕の場合、一回の仕込み量は、米ぬか360kg,骨粉80kg、油粕80kg、蠣殻粉末80kg、あわせて600kg、それに対し水が大体120リットルですが、ジョーレン一丁で2時間半ぐらいで出来上がります。トラクタのロータリーや、管理機を使ったこともありますが、ジョーレンでやるのが一番早くできました。
B 三つ目は、ドラム缶でクンタンを焼く方法です。
昔からの方法でクンタンを焼いていましたが、灰にならないよう新しい籾殻をかけていってやらねばならず、目が放せませんでした。かといって、市販の「クンネン器」は高いしなあと思っていたところ、「現代農業」誌3月号の炭焼きのページを見て、思いつきました。
蓋つきのドラム缶は、産業廃棄物処理業者に声をかければ、濃縮ジュースの輸入用のが200円ほどで分けてもらえます。それを図のように加工します。籾殻をドラム缶の口近くまで入れて、灯油を200ccほどスプレーします。確実に着火したら、ドラム缶の蓋をして煙突を立てます。煙突と蓋の継ぎ目のところに土を盛って、隙間ふさぎと倒れ防止とします。
どこまで焼けたかは、ドラム缶をさわると熱いのでわかります。約3時間で焼けるので、空気穴にレンガを突っ込み、土をかけ、空気を遮断します。一晩置いたら消化していますので、ドラム缶の蓋をとってクンタンを取り出します。きれいな、真っ黒なクンタンができていました。今年の秋は3,4ヶ並べて焼こうかな。
[追記]
●酒かすは、まだ頭の中のイメージだけです。どなたか試してみてください。産業廃棄物のひとつで、処理に困っているといわれる酒かす。うまく使えるようになると、面白いなあ。情報交換しませんか。酒かすをペレット化したもののN成分が約5%ですので、酒かすそのものN成分は約1.2%だと推定されます。酒かすの中に酵母菌がどれくらい生きのこっているかなあ。
●ボカシを作る場所が、僕の場合、納屋のコンクリートの土間です。油断をすると、底の部分が固まったり、かびたりしてしまいます。誰かいい知恵はありませんか。
●最初のクンタン焼きではきれいに消化したのに、その後なかなか消化してくれません。少々水をかけたぐらいではだめです。空気の遮断がきちんとできていないからでしょうが。どうしたらいいのでしょう。どなたか教えてください。
{以上、アンケートのお願いなどの資料です}